高齢になると、誰にでも発症する可能性のある認知症。
症状が進行すると、家族だけで介護をするのは難しくなってしまう場合もあります。
そんなときに頼りになるのが介護施設ですが、認知症が進行した状態でも入居することができるのでしょうか。
もしかしたら、症状が進行した認知症だと、介護施設に入ることは難しいと思っている方もいるのではないかと思います。
そこで今回は、認知症対応型通所介護(認知デイサービス)の紹介を中心に、認知症の方でも入れる介護施設の種類やその特徴についてまとめました。
介護施設を選ぶ際のポイントについても解説していますので、介護施設を探している方や、将来的に入居を検討している方などはぜひ参考にしてみてください。
認知症対応型通所介護(認知デイサービス)とは
認知症対応型通所介護(認知デイサービス)とは、認知症の高齢者が、デイサービスセンターなどに通い、入浴・食事・機能訓練などを受けるサービスのことです。
自宅から施設までの送迎もおこなっています。
認知症対応型通所介護は、「地域密着型サービス」です。
今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービス
一般のデイサービスとの違い
認知症対応型デイサービスが一般的なデイサービスと異なるのは、認知症についての理解が深い職員がサポートに当たっている点です。
介護サービスは、入浴や食事、レクリエーションがメインですが、専門的なスタッフがアットホームな雰囲気で利用者一人ひとりにあった対応をするため、一般のデイサービスには馴染めなかった人も、次第に打ち解けられるようになります。
定員が少人数で、サポートが手厚い
認知症対応型通所介護では、厚生労働省の定めにより利用者の定員は運営単位ごとに12名以下と決められています。
介護スタッフ1人当たりに対する利用者の数が限られているため、一人ひとりに合った手厚いサポートを受けることができます。
認知症の方のなかには、たくさんの人がいる場所や知らない人とのコミュニケーションが苦手な方もいるので、定員が決まっていたり、ほぼ毎回同じ利用者と過ごせたりすると安心して通えるようになります。
>>認知症対応型通所介護とは | 公益財団法人長寿科学振興財団
専門的なケアを受けられる
認知症対応型通所介護では、認知症の方の介護を行う環境が整っており、通常のデイサービスよりも専門的なケアを提供できます。
また、認知症対応型通所介護で働くスタッフは、利用者が認知症の方に限定されているため、認知症の方への対応に関して経験を積んでいます。
特に、事業所の管理者は「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了していることが義務となっているので、認知症に関する高度で専門的な知識を持っています。
地域密着型サービス
2006年の介護保険法改正に伴い、認知症対応型通所介護は地域密着型サービスのひとつとなりました。
各事業所を利用できるのは、原則として事業所のある市区町村に住んでいる方のみとなっています。
地域ごとの特性を活かし、少人数で一人ひとりの利用者に寄り添ったサービスを提供しています。
認知症の方はデイサービスを嫌がる場合も
しかしながら、認知症の方がデイサービスを拒否するケースが多々あります。
認知症の方が自分で身の回りのことができなくなったからといって、必ずしも自尊心が失われるわけではありません。
デイサービスでのレクリエーションをばかばかしく感じたり、自分には身の回りのサポートは必要ないと思ってしまうこともあります。
そこで大事になるのは家族の声掛けです。
「みんなお父さん(お母さん)のことを待っているよ」というように、その人が周りに必要とされているということを伝えてあげましょう。
どうしても嫌がる場合は、施設の環境や周りの利用者と本人が合っていないというケースも考えられます。
その場合、ケアマネージャーと相談しながら、入浴介助や送迎の職員の変更を申し出たり、苦手としている利用者とは別グループにしてもらったりする必要があるでしょう。
あるいは、大勢の利用者がいる施設の雰囲気自体が嫌な場合、施設の変更を検討することもあるでしょう。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の種類
認知症対応型通所介護の事業所は、単独型、併設型、共有型の3種類があります。
単独型は、認知症の方のためのデイサービスを単独で運営する事業所を指します。
多くの場合は、民家などを改装して使用しています。
併設型は、病院や老人ホームなどの施設に併設されている事業所のことです。
共有型は、グループホームなどの食堂や居間を借りて運営されている事業所を指します。
種類 | 特徴 |
---|---|
単独型 | 認知症の方のためのデイサービスを単独で運営する事業所 民家などを改装して使用 |
併設型 | 病院や特別養護老人ホームなどの施設に併設されている事業所 |
共有型 | グループホームなどの食堂や居間を使用して運営されている事業所 |
認知症対応型通所介護の利用条件と料金
認知症対応型通所介護の利用条件は、大きく3つがあります。
- 要支援もしくは要介護認定を受けている
- 医師から認知症の診断を受けている
- 住んでいる市区町村の事業所であること
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は配置基準の制度上、認知症に特化してサービスが受けられるため、通常の通所介護よりも1日あたりの利用料金が若干高くなります。
【認知症対応型通所介護の利用料金】
認知症対応型通所介護の利用料金は、単独型、併設型、共用型の事業所形態や、利用時間、によって以下のように異なります。
単独型 | 併設型 | 共有型 | |
---|---|---|---|
4時間以上 5時間未満 | 要支援1:496円 要支援2:550円 要介護1:568円 要介護2:625円 要介護3:683円 要介護4:740円 要介護5:797円 | 要支援1:448円 要支援2:597円 要介護1:514円 要介護2:565円 要介護3:617円 要介護4:668円 要介護5:719円 | 要支援1:259円 要支援2:273円 要介護1:278円 要介護2:289円 要介護3:298円 要介護4:308円 要介護5:318円 |
5時間以上 6時間未満 | 要支援1:740円 要支援2:826円 要介護1:856円 要介護2:948円 要介護3:1038円 要介護4:1,130円 要介護5:1,223円 | 要支援1:666円 要支援2:742円 要介護1:769円 要介護2:852円 要介護3:934円 要介護4:1,014円 要介護5:1,097円 | 要支援1:412円 要支援2:435円 要介護1:444円 要介護2:459円 要介護3:476円 要介護4:492円 要介護5:509円 |
6時間以上 7時間未満 | 要支援1:759円 要支援2:849円 要介護1:875円 要介護2:972円 要介護3:1,064円 要介護4:1,159円 要介護5:1,254円 | 要支援1:683円 要支援2:761円 要介護1:788円 要介護2:874円 要介護3:958円 要介護4:1,040円 要介護5:1,125円 | 要支援1:423円 要支援2:446円 要介護1:456円 要介護2:471円 要介護3:488円 要介護4:505円 要介護5:521円 |
お住まいの地域によって、地域区分が設定されており利用料金はその地域によっても異なります。
詳しくは市区町村の窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャー問い合わせて下さい。
また日常生活費(食事やおむつ代など)などは、別途負担が必要になります。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)のサービス内容
認知症対応型通所介護の主なサービス内容は、レクリエーションや個別機能訓練です。他にも、入浴や排泄、食事などの日常生活上の支援、口腔機能向上訓練などを提供しています。
どんなサービスがあるの? – 認知症対応型通所介護|厚生労働省
1日のスケジュール例
時刻 | 内容 |
---|---|
9時 | ・送迎車に乗って自宅から施設に移動 ・看護師による健康チェック |
10時 | ・個別機能訓練 ・アクティビティ ・希望者は入浴 |
12時 | 昼食 |
13時 | ・個別機能訓練 ・レクリエーション ・ボランティア活動 ・アクティビティ |
15時 | 休憩(ティータイム) |
16時 | 帰宅 |
デイサービスとデイケアの違い
参考までに、混同されがちなデイケアとデイサービスの違いについて説明します。
デイケア
デイケア(通所リハビリテーション)は、利用者が老人保健施設や診療所に通い、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)らの指導のもと、リハビリテーションを行うことを指します。
日常生活に必要な機能を改善することが目的です。
具体的には、以下のような動作を改善するためのリハビリテーションを行います。
- 立つ・歩くなど運動機能の訓練(理学療法)
- 温熱療法・マッサージ(理学療法)
- 掃除や着替え、食事の訓練(作業療法)
- 発声・発語の訓練(言語聴覚療法)
- 嚥下(飲み込み)機能の向上(言語聴覚療法)
デイサービス
デイサービスは介護保険で利用することのできるサービスの一つで、介護保険上は「通所介護」「介護予防通所介護」と呼ばれます。
利用者の気分転換や身体機能維持、家族の介護負担の軽減などを目的とした、日帰りの介護サービスです。
介護サービスの必要度を示す要介護度で「要支援1」以上の方が利用できます。
デイサービスはデイケアと比較して、より日常生活の介助という点に力を入れていています。
具体的には、以下のようなことを行います。
- 体操や口腔体操
- 創作などのレクリエーション
- 入浴、食事
- 他の利用者やスタッフとのコミュニケーション
デイケアとデイサービスの違いについて簡単にまとめると、デイケアは専門家がいるリハビリで医療寄りのサービス、デイサービスは日常生活の充足が目的の介護寄りのサービスと言えるでしょう。
認知症に対応している介護保険施設
介護保険サービスで入所できる施設を「介護保険施設」といいます。
65歳以上、又は40歳以上で特定疾患があり、一定の要介護認定を受けた方が対象となります。
- 65歳以上の方(第1号被保険者)
要介護・要支援状態 - 40歳から64歳の方(第2号被保険者)
要介護・要支援状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合
公的な施設なので、入所のための一時金は必要ありません。
月々の負担額は所得や地域差により異なります。
入所希望者が多いため、空き状況についてはケアマネージャーに相談しましょう
特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)
特養(特別養護老人ホーム)は介護保険施設の一つで、公的に運営されており、ほかの施設よりも安い費用で利用できます。
看護師の24時間体制での配置は義務付けられていないため、常時医療的ケアを必要とする場合は入所が困難となる場合があります。
部屋のタイプは大部屋の従来型に加え、最近では個室と共有スペースのあるユニット型が増えています。
日常生活を送るのに必要な介護や、体の機能を維持するためのリハビリテーションを受けながら、終の住居として余生を送ることができる場所です。
月々の費用は5~15万円程度で、入所条件は年齢65歳以上、介護保険の要介護認定で「要介護3」以上の認定を受けた方
認知症の方は、要介護1~2であっても「認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態」なら、入所の対象となる場合もあります。
介護老人保健施設(老健)
病院から自宅へ戻るための自立を目的とした施設で、入所できる期間は3か月から1年程度です。
必要な医療を受けながら、在宅で療養生活が送れるように、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションや、看護師や介護士による日常生活の支援を受けられます。
部屋のタイプは、個室やユニット型個室もありますが、割合としては大部屋が多くなります。
月額は部屋のタイプにより異なりますが、6~16万円程度で、要介護1以上の方が入所の対象です。
施設によっては、感染症のないことや長期入院を必要とする病気のないことなどが条件となる場合もあります。
認知症対応の民間施設
民間の入所施設は入所時に一時金が必要なことが多く、月々の費用も介護保険施設と比較すると割高になりますが、必要時は比較的早く利用ができます。
特養の待機期間中、一時的に利用する方もいますが、施設によっては独自のサービスなどもあるため、民間の施設を選ぶ方も多いです。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、「介護付」「住宅型」「健康型」の3つに分かれますが、認知症の方が入所できるのは「介護付き有料老人ホーム」と一部の「住宅型老人ホーム」です。
食事や掃除に加え、介護付き有料老人ホームでは「特定施設入居者生活介護」として、24時間介護サービスを受けられます。
住宅型老人ホームでは、必要時は個々に在宅介護サービスの手続きをします。
部屋のタイプは、8畳以上の個室が中心ですが、介護付き有料老人ホームでは認知症フロアを設置しユニットケアを行っているところもあります。
季節のイベント、カラオケなどのサークル活動もあり、自宅のように生活できるよう様々な工夫がされています。
入居一時金(前払い金)として数十万~数千万が必要なことが多く、月額は10~30万円程度です。
入居一時金を必要としない施設は、その分月額が割高になります。
概ね65歳以上の方が対象ですが、特に介護認定を条件としていない施設が多いです。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
認知症の方が、5人~9人ほどのグループで、共同生活を送る施設です。認知症の知識を持つスタッフが常駐しており、入所者の能力に合わせて、炊事・掃除・洗濯などの仕事を分担し、皆で協力しながら生活します。
部屋のタイプは個室と共有スペースのあるユニット型で、地域密着型なので、慣れ親しんだ土地に住み続けることができます。
家庭的な雰囲気の中で、役割を持って生き生きと過ごすことや、機能訓練、レクリエーションなどにより、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。
看取りを行う施設もありますが、医療行為は基本的に行われない場合が多いです。
入居一時金として約数10万円が必要なことが多く、月額は12~18万円程度です。
介護認定によりにより要介護1(一部は要支援2)以上で、認知症の診断を受けた方が対象です。
地域密着型サービスなので、その地域に住民票があることも条件です。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)
介護施設ではありませんが、比較的自立度が高い方が入居する、バリアフリーの賃貸住宅です。
安否確認や生活相談の見守りサービス、必要に応じて食事や掃除・洗濯などの家事代行が受けられます。
介護が必要な場合は個々に通所介護や訪問介護などの手続きをする必要があります。
介護度が高くなった場合や認知症が進行した場合などは、他の施設へ入所する必要性が出てくることも多いようです。
料金は、敷金が0~数100万円、月額は5~25万円程度です。
60歳以上又は、40歳以上で要支援以上の認定を受けていることが条件となります。
同居者(親族・事実婚を含む配偶者)に関しても同様の条件となります。
ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)
最長30日まで介護保険で宿泊できる介護サービスです。介護者の体調不良や急用時の他、リフレッシュのために利用することができます。
個室や大部屋があり、日常生活の介護や機能訓練などが受けられます。
特養や有料老人ホーム、老健や介護療養型医療施設、そのほか民間のデイサービスに併設されている場合もあります。
予約が必要なため、日頃から利用可能な施設を調べたりケアマネージャーに相談し、いざというときに利用できるようにしておきましょう。
料金は施設により異なり、65歳以上又は、40歳以上で特定疾患を持つ要介護1以上の方が利用できます。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は地域包括ケアを進めるべく創設されたサービスで、一つの事業所が24時間365日サービスを提供します。
提供サービスとして「通い」を中心に、「訪問」「泊まり」を一つの事業所がすべて担っているのが特徴です。
すべてのサービスが同じ事業所の馴染みのスタッフによって行われるため、環境の変化が苦手な認知症の方も比較的安心して利用ができます。
料金は要介護度や利用方法、事業所によって異なります。
65歳以上又は、40歳以上で特定疾患を持つ要介護1以上の方が利用できます。
また地域密着型サービスのため、基本的にその地域の住民の方に限られます。
適度な施設利用で介護疲れを軽減
認知症の方は環境の変化に弱く、新しいサービスの利用や施設入所となると、家族としても心配は尽きないことでしょう。
しかし認知症の在宅介護は、身体の疲れだけでなく心の辛さも大きく、他人には計り知れないものです。
最近では、需要に合わせて様々なサービスがあり、認知症のためのサービスも増えてきています。
介護負担が大きくなり過ぎないよう、認知症のご家族と良い関係を保てるよう、上手に施設を利用しましょう。