希望に合う施設が見つかったら、見学や体験入居は必須です。
どんな施設なのかは資料やパンフレットを見ているだけではわかりません。
予算や立地条件が合ったとしても、楽しく安心して暮らしていけるのかは、本人だけでなく家族にとっても気がかりなことです。
入居してから施設の雰囲気や食事などが合わずに退去するということにならないためにも、施設見学を積極的に行いましょう。
足を運んだ際には職員や入居者の様子を見て、不安や疑問は小さいことでも率直に質問しておくのが重要です。
今回の記事は、見学の時に確認しておきたいこと、知っておきたい大切なポイントを紹介します。
インターネットの情報だけでは見えてこないこと
施設のホームページやパンフレットの情報で施設の概略を理解することはできます。
しかし、それだけでは情報収集は不十分です。
施設での暮らしの良し悪しを左右する最も大きな要因は、そこで「働く人」の質とそこで暮らしている「入居者」との関係性です。
こればかりは、実際に足を運んで見てみないと分かりません。
施設で暮らすのは親本人です。
人との相性の感じ方は親子でも異なるので、見学は親と一緒に行きましょう。
親の判断力が弱くなってきて一緒に行くのが難しい場合でも、兄弟や親族など複数の視点から見るのが理想です。
施設長やケアマネージャーの施設運用や介護の考え方を聞くのはもちろんですが、施設内を案内してもらうときに入居者と会った時の両者の表情や言葉がけもよく見てみましょう。
施設側と入居者のこういった関係性は、施設によってかなり違いがあります。
複数の施設を見学することで、どんなところが親に合いそうかだんだん分かってきます。
- 施設職員の介護や施設運営の考え方に共感できるか
- 入居者との接し方
- 職員の表情や服装
- 入居者の表情や、職員との会話の雰囲気
チェックポイントは「人」です。親がそこに馴染めそうかが重要
見学のおすすめ時間はお昼の12時
施設に見学に行く時間を選べるようなら、昼食の時間帯を指定しましょう。
入居者が食堂に集まる時間帯なので性別や雰囲気、介護の必要度合いを知ることができます。
食堂に誘導するため、歩行ができない入居者をサポートしたり、車いすを押したりする姿も見れます。
見学の予約を取るときに、昼食を試食できるか聞いてみましょう。
試食の時間は、職員がどのように入居者に食事介助をしているか観察できます。
どんな声がけや会話をしているのかも聞き取れるはずです。
何か気になる点があればメモ帳に記しておくと、後から他の施設と比較する際に役立ちます。
新聞広告やチラシなどで「食事付き見学会」の募集をおこなっている施設があります。
施設側にとって、一度に多くの利用者を案内できるので効率的な方法です。
しかし、それが一つのイベントとなってしまい普段より豪華な食事になったり、職員も見学者を意識した介助をしていたりします。
見学会でも通常と変わらない普段通りの様子を見せている施設もありますが、参加する場合は「もしかしたら普段とは違うかも」と頭の片隅に入れておくことも必要です。
こういった見学会のメリットは、質問時間で他の参加者から自分たちとは異なる視点の質問が聞けることです。
施設選びの参考になる新しいポイントが発見できます。
- 食堂に集まる時の入居者へのサポート
- 食事介助の様子
- 食事中の職員や入居者の会話や雰囲気
- 食事はどこで作られているか
- 介護職や療養職の用意はあるか
- メニューは選択できるのか
- 食べられない日はキャンセルできるのか
施設長・ケアマネージャーと話す
見学をする際、施設の理念や介護の考え方を聞くのは大切なことです。
施設によっては営業マンが対応するケースもあるので、予約の時に「施設長やケアマネージャーからのお話も伺いたい」旨を伝えておきましょう。
施設の考えや理念を聞いておこう
特養の入居条件は原則「要介護3以上」となっており、明らかに介護度が高い高齢者を助けるという目的が明確になっています。
一方で、民間施設は入居の対象が自立〜要介護5までと幅広く受け入れている所が多く存在しています。
介護に対して明確な理念があれば良いのですが、そうでもなさそうな施設は要注意です。
本来は介護度が高い入居者を募集してたけど、経営が苦しくなってきたから誰でも受け入れる、といったのは経営の理念が薄いのではと勘ぐってしまいます。
特定施設のケアマネージャーは変更できない
ケアマネージャーとの相性も重要です。
在宅介護の際には、ケアマネージャーの言動に納得できないなど不満が生じたときにはケアマネージャーを変更できます。
しかし介護施設では、施設に所属するケアマネージャーにケアプランを作成してもらうことになるので、原則として変更できません。
住宅型の施設では変更可能ですが、施設と併設になっている事業所のケアマネージャーだと、今後も顔を合わせるので心情的に変更しづらい部分があります。
見学の際は、ケアマネージャーともしっかり話して介護に対する考え方や相性を確認しましょう。
介護保険施設でも施設のケアマネージャーにケアプランを作成してもらうのですが、順番が来て入居可能になると相性が・・と言っていられなくなります。
しかし、複数の特養を見学して気が進まないところは除外して、申し込みをしている人はたくさんいます。
要注意
- 在宅の時のケアマネージャーに継続して依頼はできない
- 相性が悪いからといってケアマネージャーを変更することはできない
周辺の環境や交通手段に不都合はないか確認
見学の日は、予定時間より少し早めに行って建物を前から見たり、裏にまわって見たり、周辺の環境をチェックするのも大切です。
- 玄関先はキレイでも、裏に粗大ゴミが放置されていないか
- 散歩する広場や公園が近くにあるか
- 自動車の交通量は多いか
自由に外出できる施設なら、コンビニやスーパーが近くにあると便利です。
パンフレットに書いてある環境と、実際に行ってみて感じる環境とでは「住んでみたい」という価値観は異なるものです。
周囲に関連の病院や他の施設があれば、その様子も見ておきましょう。
目当ての施設を見学した後に、関連施設であれば「あの施設も見せてもらえますか」と言えば案内してくれます。
もし親がその施設に入居した場合、あなたはどのような交通機関を使って会いに行くのでしょうか。
電車やバス、自動車・・・遠くの施設になると新幹線や飛行機を利用したら費用もかさみます。
- 親は「自身が暮らす場として」
- 子は「たびたび通う場として」
それぞれチェックします。
子が通っていく時に、親を自宅に連れ帰る計画があるなら、その点も加味しておきます。
- 自宅からの交通手段
- 散歩に行けそうな公園や道路の様子
- コンビニやスーパーなどの商業施設の有無
- 近隣にどのような病院や施設があるか
- 施設に訪問者用の駐車スペースが確保されているか
- 周辺道路や電車の騒音が多いか
居室はもちろん、共用スペースにも注目
見学に行くと空いている居室を案内してくれます。
空室がない時は、入居者がいる居室を見せてくれる場合もあります。
「入居者の居室を見せてくれる施設は、入居者との関係性が良いところ」と言えるでしょう。
多床室(相部屋)は通常、カーテンによって仕切られています。
建具や間仕切り壁で、プライバシーを保てるように配慮している施設もあります。
実際に親が暮らすことを想定しながら、窓からの見晴らしを確認して気持ちよく過ごせそうかチェックして見ましょう。
持ち込みたい家具があれば、メジャーを持参してサイズを確認しておくと後で役に立ちます。
居室から食堂や浴室などへの移動する経路も確認しておきましょう。
一人で行けるうちは問題ありませんが、一人で行けなくなると職員にサポートしてもらうことになります。
こう言った場合「住宅型」の施設では、介助にオプション料金が発生するケースがあります。
浴室は自分で入る浴槽と、介助用機械浴を設置しているところが多いです。
自分で入れる場合、
- 毎日入れるのか
- 回数制限があるのか
を事前に確認しておきましょう。
居室がコンパクトな場合には、日中くつろげるリビングのような空間があると良いかもしれません。
実際に入居者が利用しているかも確認しておきます。
- 居室の間取りや広さ、収納スペースは充分か
- 窓からの景色は快適か
- トイレや洗面スペースへの経路
- 居室以外にくつろげる共有スペースがあるか
- 食堂や大浴場への経路
(歩行困難になったら?) - 持ち込める家電や家具のサイズは合いそうか
(メジャーを持参しましょう) - 多床室(相部屋)はプライバシーに配慮されているか
- 備品はしっかり補充されているか
併設事業所のサービス内容を確認
介護型施設では、原則として施設に所属するケアマネージャーにケアプランを作成してもらい、施設職員から介護サービスを受けます。
それ以外の施設では各自で、外部の居宅介護支援事業所と契約します。
ケアプランも契約した事業所のケアマネージャーが作成します。
住宅型の施設でも、多くは同じ施設内に介護サービスを提供する訪問介護やデイサービスの事業所を併設しています。
そちらに所属するケアマネージャーが入居相談に対応したり、施設内を案内してくれると「施設のケアマネージャー」と勘違いしまいがちです。
名刺を頂ければ分かりますが、施設のケアマネージャーではありません。
身近にケアマネージャーがいるんは安心感につながることもあります。
しかし、施設側の意図として入居者の「囲い込み」をしている面もあります。
本来であれば、他の事業所のケアマネージャーやサービスを利用しても良いのですが、同じ敷地内にあり、見学で顔を合わせて挨拶を交わしてしまうと、その人に頼みます。
結果、入居者のほぼ全員が併設の介護事業所のサービスを利用している状況になっています。
こう言った状況は、競争原理を失い、過度のサービス提供がされるなど問題が生じるケースがあります。
厚生労働省は「入居者のサービス選択自己決定権を妨げてはならない」という指針を打ち出していますが、実際には「入居者の囲い込み」は無くなっていません。
- 本人の残存機能を発揮する機会を奪うことになる
(今まで出来てたことができなくなる) - 余計な介護サービスを利用して限度額を超えた場合、全額が利用者負担となる
住宅型施設のなかには小規模多機能を併設しているところもあります。
介護度によって定額で「通い」「訪問」「宿泊」のサービスを希望に応じて利用できます。
住宅型の施設は行動制限が少なく、自由度が高いけど介護サービスが手薄になりそうな心配があります。
敷地内に小規模多機能があれば、その心配や不安がなくなるのでチェックしておきましょう。
施設見学の際には併設事業所のサービス内容、利用者との関係性について説明してもらいましょう。
外出や外泊、家族の面会は自由にできるか
介護型の施設では近所を含め、入居者が一人で外出するのを安全の面から認めていないところが多いです。
介護する職員が忙しいため、マンツーマンで付き添うことは簡単ではありません。
事前にお願いしてあれば何とか対応してくれるかもしれませんが「今から近所に買い物に行きたい」と思っても難しいでしょう。
基本的に買い物は、施設が代行してくれます。
比較的自立の高齢者が多く暮らしている施設では、窓口で行き先と帰宅する時間を聞かれることはありますが外出はできます。
一人で外出できる親が、外出禁止の施設に入居すると後々「暮らしづらい」となるので避けた方がいいでしょう。
外泊については、家族が送迎して外泊許可を取れば可能です。
家族の面会時間を設定している施設も
家族の面会については、時間設定をしている施設と24時間可能としている施設があります。
家族の面会について
- 自立の高齢者が暮らす住宅型施設は自由度が高い
- 介護型施設はルールがあるところが多い
家族が施設の宿泊できるところもあります。
住宅型では親の居室で泊まれる施設もありますが、専用のゲストルームを備え、有料で宿泊できるようにしている施設もあります。
面会や宿泊に関して、施設によって考え方がそれぞれ異なるので見学時に確認しましょう。
認知症対応の施設では施錠扉のところも
認知症の高齢者を受け入れる施設では、扉に施錠しているところがあります。
施錠するなどの行動制限は虐待だという見方もあり、「夜間のみ」として出来るだけ施錠する時間を減らす施設が増えてきました。
施錠以外の対応として、
- 自動ドアの電源を切って開かない
- センサーで徘徊を事前探知
などをおこなっている施設も増えています。
徘徊して事故に遭う心配は、各施設にとっても悩ましい課題となっています。
認知症の方だけが暮らすグループホームでも、考え方はさまざまです。
見学の際には施設の方針を聞いておきましょう。
>>認知症の父が電車にはねられ死亡、高額賠償請求 遺族の苦闘、それを救った最高裁判決
- 外出に施設の許可が必要か
- 入居者一人の外出を認めているか
- 認知症の方の外出を防ぐ対応策
- 家族のゲストルームは設置されているか
- 家族との面会時間は決められているか
レクリエーションはどのようにしているか
多くの施設では入居者が楽しめるようにレクリエーションがおこなわれています。
日々のレクリエーションとして歌や体操、しりとりなどです。
住宅型施設よりも介護型施設の方が盛んで、比較的元気な住宅型では自由参加、介護型では原則参加になっていることが多いです。
日中、活発に行動することで昼夜逆転にならない予防をして、規則正しい生活を送る効果があります。
人付き合いが苦手な親の場合、レクリエーションの時間を見学して馴染めそうか見ておいた方がいいでしょう。
馴染めにくい入居者がいる場合、どのように対応しているか職員に聞くのも大切です。
年間を通して季節の折に行事を企画している施設は多く、介護型施設では生活のメリハリとして入居者にとって楽しみとなっています。
1月:新年会 | 2月:節分 | 3月:雛祭り |
4月:お花見 | 5月:端午の節句 | 6月:父の日 |
7月:七夕 | 8月:納涼祭 | 9月:敬老会 |
10月:ハロウィン | 11月:紅葉狩り | 12月:クリスマス |
敬老会やクリスマスには、家族も招待状が届くところもあります。
家族が来るのと来ないとでは、親の気持ち的にも意欲が大きく変わります。
職員とも交流できる機会なので、できるだけ都合をつけて参加したいものです。
介護が必要になったら部屋を移るのか
自立や介護度が低い高齢者を受け入れている施設では、介護の度合いが重くなったらどうなるのか心配になります。
施設によっては、重度介護の必要な人専用の居室を設けているところがあるので、そちらに移るのを促される場合があります。
心身の状態の変化に応じた居室の移動については、入居前に確認しましょう(入居契約書にも明記されています)。
居室を移す施設でも、承諾を得ないで強制的に居室を変えることはないので安心できます。
- 主治医や施設指定の医師の意見を聞く
- 入居者の意思を確認する
- 身元引き受け人の同意を得る
- 一定の観察期間を設ける
このような住み替えの可能性がある施設を選ぶ場合は、入居前に介護が必要になったら移る居室も見せてもらいましょう。
- 居室が狭くなったら費用の調整はあるのか?
- 追加費用が発生するのか?
こういった部分の確認も必要です。
複数の施設を運営するグループ法人の強み
パンフレットを見ると「◯◯会」「△△グループ」といった名称がついた施設があります。
見学に行くと、周囲に複数の形態が異なる施設が建っている場合があります。
- 社会福祉法人:特養を柱にグループホームや有料老人ホーム、ケアハウスなどを運営
- 医療法人:総合病院を柱に老健やグループホーム、有料老人ホームなどを運営
- 株式会社:有料老人ホームやサ高住、グループホームなどを運営
必ずしもグループ運営が優れているわけではありませんが、「私の親は住宅型?介護型?」と迷っている場合は、他の形態の施設を運営しているグループ法人を検討するのも一案です。
病気の心配があれば、病院併設の施設だと何かあってもすぐに対応してもらえて安心感が高まります。
特養を望むけど待機者が多くて入居までに時間がかかる場合、同じグループの有料老人ホームなどの入居して待機していると、特養入居の順番を融通してくれるケースもあるようです。
グループホームやケアハウスに入居した後に、介護度が重くなりそこでの生活継続が難しくなることもあり得ます。
そういった時、施設側としても行き場がない高齢者を追い出すことは心苦しいのか、同経営の特養や老健への移動をする場合があります。
見学の際、近隣に別の施設があるなら見せてもらいましょう。
グループ内で入居者がどのような住み替えが行われているのか、費用の面も含めて実績を聞いておくと安心です。
医療依存度が高い親は提携病院を確認
下の表は特養における医療処置などが必要な入居申込者への対応の調査結果です。
- 「注射・点滴」が必要な申込み者を「お断りする」が83.1%
- 「吸入・吸引」が必要な申込み者を「お断りする」が58.4%
- 「経鼻経腸栄養等」が必要な申込み者を「お断りする」が56.4%
医療依存度の高い方とは、毎日の生活に医療的なケアが必要不可欠である状態の方をいいます。
例えば、自力での呼吸や摂食が難しい場合には人工呼吸器の使用、気管切開、酸素吸入、一時間に一回以上の吸引、経管(チューブ)栄養の方をいいます。
このような医療依存度の高い方は、グループホームや有料老人ホーム等での入居は厳しいのが現状です。
特養での医師の配置は、週に2回ほど施設に訪れて診察する非常勤の「委託医」が1名だけです。
医師の不在時に入居者の体調が悪くなったら、看護師の判断で病院もしくは救急車を呼びます。
看護師の配置人数は入居者の数によって変わりますが、100名の定員なら3名です。
それでも常時3名揃っているわけではなく、夜間は手薄になります。当然医療にまで手が回らなくなります。
有料老人ホームであれば充実したケアをおこなっていそうですが、そうとも限りません。
高額な有料老人ホームでも、医師が常駐している施設はめったにありません。
看護師の配置基準も特養と同じで、24時間体制で常駐しているところは少ないです。
親に医療措置が必要な場合は、、それを最優先条件にして施設を探す必要があります。
医師の指示を受けた看護師には、以下の医療行為が認められています
- インシュリン注射
- 褥瘡(床ずれ)の処理
- 痰の吸引
- 中心静脈栄養
- 経管栄養(胃ろう)
- 在宅酸素
- 人工呼吸器の管理
日常的な医療措置が必要ない場合でも、
- 医師・看護師との連携体制
- 提携病院の場所
- 診療科目
- 病院までの送迎の有無
などを確認しておきたいものです。忘れがちですが、歯科や耳鼻科などとの連携、認知症対応についても聞いてみましょう。
体験入居やショートステイで施設を知る
気になる施設を見学して「良さそうだな」と思えるところがあったら体験入居やショートステイで、実際に親に宿泊してもらいましょう。
1時間程度見学しただけでは分からないことも、1日を通して滞在することで多くの発見があります。
見学時には入居者に声をかけづらいものですが、体験入居やショートステイを利用すれば施設で行われているプログラムに参加できるので話しかけやすくなるでしょう。
起床から就寝までの流れや職員から受けるケアの内容を具体的に体験できます。
>>体験入居を受け入れているようでしたら申し込んでおきましょう
体験入居とショートステイは何が違うのでしょう。
どちらも施設に宿泊する点は共通しています。
- 体験入居
-
施設が独自に設定しているサービス。介護保険は適用されないので全額自己負担。
- ショートステイ
-
介護保険法によって定められたサービス。
居住費や食費は必要ですが、介護費用に関しては介護給付費が支給されるので1〜2割の自己負担で済みます。
一泊から最長30日まで利用可能。
介護保険法の目的
介護保険法の目的とは、介護を必要とする方がその人らしい自立した生活を送っていけるように支援することです。
介護保険法は、高齢者介護の現状を踏まえ、社会のニーズに合わせた制度とするべく3年ごとに改正されます。
介護保険法の原文には目的として、以下の内容が記載されています。
『この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。』
介護保険施設のほか、有料老人ホームなどの特定施設でも「短期利用特定施設入居者生活介護」と呼ばれるショートステイを実施するところが増えてきました。
見学時に実施の有無を確認して利用してみましょう。
- 体験入居
-
有料老人ホームなどに入居して、日常生活の支援のサービスを受ける。
施設独自のサービスなので全額自己負担。
介護保険利用:不可
- 短期入所生活介護
-
特養などに短期入居して、日常生活の支援やリハビリなどのサービスを利用する。
要支援1から利用できる。
介護保険利用:可能
- 短期入所療養介護
-
医療機関や老人保健施設などに短期入所して、日常生活上の世話や、医療、看護、リハビリなどのサービスを受ける。
要支援1から利用できる。
介護保険利用:可能
- 短期利用特定施設入居者生活介護
-
特定施設(有料老人ホーム・ケアハウス)に短期入所して、日常生活の支援やリハビリなどのサービスを受ける。
要支援1から利用できる。
介護保険利用:可能
強制退去になってしまうケース
施設から「退去してほしい」と伝えられるケースがあります。どんな理由が多いのでしょうか。
主に以下の5つの理由で退去となります。
理由1:継続的に医療行為が必要になった
施設には医師や看護師が24時間体制で配置されていません。つまり治療が必要な時にすぐに対応できません。
また、長期入院した際に退去になる施設もあります。
特養では概ね3ヶ月以上の入院で退去になります。この辺については施設ごとに規定があるので、詳細は見学の際に聞いておきましょう。
理由2:他の入居者とのトラブル
認知症の悪化などで施設内の入居者と頻繁にトラブルが起きると退去要件になることがあります。
理由3:料金の滞納
1~2ヶ月分の対応は口頭で催促があり、3ヶ月分にもなると家族を呼び出して、今後どのようにして支払って貰えるのか話し合うことになります。
入所の際の契約として、滞納が続いた場合には退去していただくという内容の文言が入っています。
理由4:施設の閉鎖・規模の縮小
施設の閉鎖・規模の縮小のような事態が起きた場合、契約終了の30日前にまでに文書で通知され、契約の終了を迎えるという流れが一般的です。
契約書にも書かれているので確認しておきましょう。
実際に、閉鎖によって関連の施設に住み替えを打診されたケースが起こっています。
理由5:入居者の介護度が低くなった
介護保険施設では入居者の状態が良くなり、介護度が低くなった場合に退去を求められる場合があります。
例えば、特別養護老人ホームの場合を見てみます。
入居基準は、2015年の改定で介護認定基準が介護度3以上の方となりました。
入居時点で、要介護3の方が、介護保険認定更新時に、要介護2と判定されると、入居要件に合わず退去を勧告されます。
この場合、自宅に戻るほか入居可能な
- 介護付有料老人ホーム(認知症の方可)
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(認知症の方は要相談)
- 認知症があれば認知症グループホーム
以上の施設への住み替えとなります。
入居者本人の体調が良くなったことは大変喜ばしいのですが、他の施設へ住み替えが必要となります。
多くの場合、住み替えると毎月の利用料が特別養護老人ホームより高くなります。
ちなみに、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は、介護度が低くなっても介護保険の利用方法が在宅(自宅)にいる時と同じように介護サービスを選択して利用するので、介護サービスを利用しなくてもそのまま、入居し続ける事は可能です。
介護付有料老人ホームの場合、介護保険認定が要支援又は要介護から自立になった場合、掃除・洗濯・食事等の生活サービスが基本に含まれています。
そのため、介護保険に変わる費用として、生活サポート費を支払う事により入居し続ける事が可能です。
- 住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅:介護サービスを利用しなくてもそのまま、入居し続ける事は可能
- 介護付有料老人ホーム:生活サポート費を支払う事により入居し続ける事が可能
退去時には原状回復費用が必要
強制退去あるいは自主的に退去するにも、原状回復費用がかかります。
原状回復費用とは、入居していた部屋をもとの状態に戻すための費用です。
- 入居者が負担:故意・過失によって生じた修繕費用
- 施設側が負担:通常の使い方・経年劣化による壁や床などの修繕費
別途設置したドアや棚などの撤去費用、それに伴う壁紙の張り替えなども一般的に入居者の負担になっています。
施設内で看取りまで行われるか
高齢者施設を探す際に、親の看取りを行うことを条件に施設の検討をする人も多いでしょう。
実際にどのような最期になるか分からないものの、死期が迫った際に退去させられると困るからです。
病院でも長期入院させてもらえないケースが多いため、行き場がなくなってしまうことも考えられます。
介護保険施設や特定施設での介護報酬には看取り介護加算と呼ばれ、看取りを行うと支払われる報酬があります。
加算の条件として、看取り指針の作成が必要です。内容は契約時に説明されます。
その上で、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意向を意思表示しておきます。
実際に「医学的に回復の見込みがない」と診断された時点で、改めて施設で最期を迎えるかどうかの意思確認をすることになります。
看取りを実施する上で重要なのは「いつでも医師の対応が可能」なことです。
看取りの指針がしっかりしている施設は、ある程度医療体制が充実している目安になります。
見学の時に施設長かケアマネージャーと話す中で、これまでの看取りの実績と共に確認しておきましょう。
- いつでも医師の対応が可能
- 職員の理解と協力
- 入居者・家族への意思確認と意思決定の支援
- 看取りマニュアルの整備
- 入居者・家族の施設における看取りの周知
参考サイト:
介護保険制度の概要 – 厚生労働省