老人ホームや介護施設への入居を検討している人やその家族の中には、施設に入居すると自由がなくなるのではないかと不安に感じていたり、一度入ると施設の外にもう二度と出ることができないと考えてしまう方がいるかもしれません。
施設の中には、元気な高齢者でも入居ができる施設はありますし、現在もそうした施設が増えています。
基本的にいつでも自由に外出や外泊をすることができます。
自由であっても、ほとんどの施設には外出・外泊におけるルールがあります。
今回は、老人ホームや介護施設における外出や外泊に関するルール、外出・外泊の際の注意点を紹介します。
多様化する施設の中で、自分にピッタリの施設をみつけるためのヒントとして活用してください。
外出ルールが厳しい施設、自由な施設どちらを選択するか
高齢者の自由度を考えると、「あまりルールが厳しくない施設が良いのかな」と考える人は多いでしょう。
確かに、高齢者が自由に外出や外泊ができる施設なら、窮屈さを感じることは少ないかもしれませんし、気軽にフラリと出かけやすいという点は魅力的です。
しかし、外泊や外出のルールが厳しい施設にはそうするだけの理由があります。
こうしたルールは、高齢者の安全と家族の安心を確保するために設けられているものなので、安否確認や見守りサービスを重視している施設では、一人一人の入居者がどこにいるのかをきちんと把握しておく必要があるわけです。
特に、認知症状が強く出ている高齢者の場合には、安心と安全重視で施設選びをする事が大切です。
施設で生活する高齢者の中には、外出したいけれど一人だけではなかなか難しいということがあります。
その場合には、外出や受診に付き添ってくれるサービスを提供している施設などがあるので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
「楽しみや生きがい」と「リスク」の両方を理解し、本人にあった施設選びを
老人ホームや介護施設では、施設ごとにルールが異なり、高齢者の自由度が大きく変わります。
楽しみや生きがいを重視して施設を選びたい人もいれば、安全や安心を重視した施設を選びたい人もいて、本人や家族にとっては何を重視したいのかという点が異なります。
また、本人が希望していても身体的に実現が難しいということがあるかもしれません。
そのため、施設選びでは、本人の希望や家族の希望を話し合った上で、楽しみや生きがい、そしてリスクのバランスが取れた施設を選ぶことをおすすめします。
外出・外泊の申し出は事前に
外出や外泊の予定が決まったら、事前に施設へ申し出ておきましょう。
施設では1日のスケジュールが決まっているため、食事の準備や入浴などの予定を事前に組んでいます。
決められた期日までに申請がない場合は、実際に食べていなくても食費が発生してしまうので注意が必要です。
申し出は「前日まで」「当日〇時まで」など施設ごとに決められています。
申し出に関係なく食費がかかる場合もあるので、できれば入居前に確認しておくとよいでしょう。
また、外出の都合に合わせて、入浴やリハビリの日程を調整してもらえることもあるので、前もって相談してみてください。
申し出は、外出届などを記入する、当日口頭でOKなど、老人ホームにより異なります。
届け出がないとスムーズに出かけられない恐れもあるため、外出や外泊に必要な手続きを確認しておきましょう。
外出・外泊する際の移動手段
外出や外泊をする場合は、公共の交通機関ではなく、家族の送迎か介護タクシーで移動することが多くなります。
介護タクシーを利用するためには事前予約をする必要があり、予約状況によっては希望時間に対応できないケースもありますので、なるべく早めに予約をしておきましょう。
介護タクシーはその名の通り介護に特化した車両ですので、万が一の時に備えていつでも対応できるよう最低限の設備は整っています。
車いすやストレッチャーのまま乗車できる車両が使われているため、介護度が重い方でも気軽に利用できます。
移動も一般的なタクシーに比べてとても快適ですし、運転手も介護関連の資格を保有しているので外出時の安心感はあります。
利用目的によっては介護保険適用外となる場合も考えられます。
介護保険適用されないと、全額負担となるので注意してください。
仕事や趣味などの目的で、介護保険タクシーのサービスを利用することはできません。
保険適用行為の一例
- 通院(受診、リハビリなど)
- 本人自身が行く必要のある調整や買い物(補装具・補聴器・メガネなど)
- 選挙投票、公共機関における日常生活に必要な申請や届け出
- 預金引き下ろし
外出・外泊の注意点
多くの施設では入居者の外出に対しさまざまなサポートを行いますが、それでも事故につながる危険があります。
外出や外泊で注意すべき点を挙げていきます。
心身に負担をかけない配慮をする
外出や外泊のメリットとしてストレスの発散がありますが、外出によって排便のリズムが乱れ、人によっては粗相してしまうこともあります。
老人ホームでオムツを使っていればそれを携行し、トイレの場所も確認しておきたいものです。
外出先での粗相などをきっかけに、外に出たくないと思ってしまうかもしれません。
高齢者は生活リズムの変化の影響を受けやすいのは事実です。
施設での生活リズムから大きく外れるような過ごし方をすると、排便のリズムだけでなく体調不良を引き起こす可能性もあります。
外出や外泊をする際には、施設での生活リズムから大きく外れないように心がけながら過ごすことが大切です。
本人や家族の外出先での心身の負担を減らすためには、トラベルヘルパーなどのサービスを使用するのも良いでしょう。
緊急時の医療機関について調べておく
常用薬を忘れず持参するほか、外泊や外出中に体調不良になった場合を考慮し、出先の医療機関の有無を事前に確認しておきましょう。
- 対応できる診療科が多い
- 緊急時に受け入れてもらいやすい
ことを考えて、なるべく大きな病院を調べておくのが大切です。
医療機関によっては緊急の受け入れ対応をしていないこともありますので、その点もあわせて確認。
外泊の場合、周辺に医療機関が無い場合は外泊先を変えることも検討しましょう。
入居中に入院する場合は二重負担になる
外泊先で長期間入院することになったら、その期間も老人ホームの入居費などは発生します。
この場合、入院費用と老人ホーム費用の二重の支払いになるのでお金の備えが必要です。
入院が決まったら、家族は早急に老人ホームにそのことを伝えてください。費用や、退院後に部屋に戻れるかどうか確認しておきましょう。
入居者だけの外出はNG 家族が付添えばOK
ほとんどの施設は、外食や買い物はもちろん旅行などにも出かけることが可能です。
年末年始やお盆などの長期休暇の際には、自宅に帰って過ごされる方も多く、気軽に外出や外泊を楽しんでいます。
しかし、施設は自宅ではないので入居者1人での自由な外出・外泊はできないケースもあります。
外出や外泊の際には原則、施設の確認を必要とすることが多く、家族や家族が承諾した人の付き添いがないと許可をもらえません。
特に、要介護に認定されている高齢者が生活する特別養護老人ホームや介護老人保健施設の場合には、事故のリスクを考慮するため、家族の付き添いがなければ外出・外泊はNGとなっているのが一般的です。
こんな時は外出が認められなかったり制限される
- 医療的なケアが必要な方
- 認知症をもつ方
- 要介護度が重く一人で外出できない方
- 体調がすぐれない場合
- 外出で心身のバランスが崩れるおそれがある場合
「外泊」は付き添いが必要
外出同様に、ほとんどの老人ホームでは外泊が可能です。
ただし、長期的な外泊の場合でも月々の家賃や管理費はそのまま支払うことに。
外泊日数によっては、利用料金の割引があるケースもありますので確認をしておきましょう。
また、施設の中には、月ごとの外泊数を設けている施設もあります。
旅行が趣味で定期的に外泊したい場合は、入居検討の段階でどのような規定があるのかあらかじめ確認しておきましょう。
こんな時は外泊が難しい
- 付き添いがない
- 日常的に医療処置が必要
- 認知症をもつ方
- 外泊が数週間など長期的な場合
心身に不安がある場合には、外泊について医師に意見やアドバイスを受けておくと安心です。
医療的管理が必要
例えば、胃ろうや経鼻栄養、痰吸引のような医療処置が日常的に必要となる場合が該当します。
家族に医療技術を持つ医師や看護師がいれば話は別かもしれませんが、そうでない場合には、高齢者の体調を悪化させる危険性があるため、外泊や長時間の外出は難しくなります。
ただし、法事などでどうしても希望する場合には、事前に本人及び家族にリスクを説明、納得した上で許可が出るということもあります。
認知症を患っている場合
認知症の症状が強く出ている方も外出・外泊の許可は出にくい場合があります。
これは、認知症を患うと環境の変化に対応しづらくなることが理由で、混乱して興奮状態に陥ってしまう、おさまっていた帰宅願望が再び強まるなど、本人と家族に大きな負担がかかってしまうリスクがあるためです。
こうした例に当てはまらない高齢者なら、外出や短期の外泊なら許可をもらえることが多いものです。
その場合でも、外泊の期間が長期になるのはNGとなることが多いので注意しなければいけません。
施設側の事情
- 介護付き有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
これらの施設はは、1日ごとに国からの介護給付を受領しています。
もし入居者が外泊をして施設にいないと給付を受けることができず、外泊中の施設の利益が減ってしまいます。
そのため多くの施設では、外泊が可能な場合でも月ごとの外泊日数に上限を設定しています。
「入院」についても同様のことが言えるため、入退院を繰り替えてしている人や、入院期間が長くなる場合には退所をお願いされるケースが多くあります。
短期間の外泊なら施設からOKが出る場合には、こうした介護施設に入居した後も家族旅行や法事などで施設から出ることは十分に可能です。
しかしその場合でも、高齢者(特に認知症の方)は生活パターンが変わることによって心身に大きな負担がかかってしまうということは理解しておきたいものです。
施設での生活は、どの施設でも概ねスケジュールが決まっていて、ある程度決まった生活リズムで生活しています。
特に介護が必要な人だと、食事や入浴に加えて、トイレのタイミングやおむつ交換のタイミングなども、毎日同じ時間帯に行われています。
外出や外泊をする際には、家族がそうしたタイミングを事前に把握した上で、出来るだけ普段通りの生活パターンに近づけるような努力と工夫も必要です。
本人だけで外出ができる老人ホームはあるの?
事前に外出届を提出することは多くの施設で必要となりますが、家族が付き添うなら外出することは基本的にOKという施設は多いですし、施設によっては一人で外出してもOKという所もあります。
ただし、その許可が高齢者が1人で「電車やバスに乗って出かける」といった外出を意味するのか、スーパーやコンビニなど「近所に買い物や散歩に行く」、といった近距離の外出ならOKなのかは施設によって違う可能性があります。
また、外出したついでにランチを楽しむということもあるかもしれません。
その場合には、事前に提出する届の中で昼食は不要と通知しておけば、その分は食事代がキャンセルされかからないという施設もあります。
自由に外出・外泊ができる施設
自由に外出や外泊がしたいという方は、以下の施設への入居を検討してみるのもよいでしょう。
- サービス付き高齢者向け住宅
- シニア向け分譲マンション
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
これらは、元気なうちに入居ができる高齢者向けの施設で、介護サービスがついていない施設もあります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の場合
サ高住とは、日常的に介護が必要というわけではないけれど、見守りや万が一の時の駆け付けサービスなどが付いた高齢者向け施設です。
このタイプの施設では、施設ごとにルールが違いはあるものの、基本的に1人の外出は自由、又は、事前に申請すれば1人でもOKという所が多いでしょう。
安全重視の施設になると、外出先や帰りの時間なども事前に申請しなければ許可が出ないという所もあるので入居前に確認が必要です。
外泊に関しても介護施設よりはルールが緩く、家族の同意があれば家族が付き添わない外泊でも可能なケースがあります。
こうしたルールは施設ごとに異なるので、これからサ高住への入居を検討している人は、そうした面についても比較しながら施設選びをすると良いでしょう。
施設選びは急がずじっくり検討
高齢者の住まいは、要介護の度合いによって入居可能な施設が絞られます。
楽しみや生きがいを重視した施設なら、高齢者は外出や外泊を楽しみやすくなるでしょう。
しかし一方で、安全や安心を重視した施設の方が、本人も家族も安心できると感じる人もいるものです。
家族や入居者本人のニーズや希望を満たしてくれるピッタリの施設をじっくり探していきましょう。