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介護費用を安くする方法と申請の手順

この記事でお伝えする内容
  • 最優先で使うべき公的制度と申請の順番
  • 税金で取り戻す方法と在宅介護で使える制度
  • まだ厳しい場合の選択肢と申請カレンダー
目次

介護費はどこまで減らせる?

介護にかかるお金は、在宅か施設かで桁が変わります。生命保険文化センターの2024年度調査では、在宅介護の月額費用は平均5.3万円、住宅改造や介護ベッドなどの一時費用は平均47.2万円と報告されています。一方で施設に入ると月15万円から30万円という家庭も珍しくありません。

在宅・施設別 月額自己負担イメージ
棒の長さ=月額負担の目安(上限20万円を基準)
在宅介護 月額 約5万円
25%
特養(公的) 月額 約10万円
50%
サ高住 月額 約15万円
75%
有料老人ホーム 月額 約20万円
100%
▶ 公的施設(特養)は民間有料の約半額。在宅は施設の4分の1に収まる傾向。

「思ったより高い」と感じた家族の多くは、相場と内訳を知らないまま支払いを始めています。まず月額のレンジと内訳を把握すると、どこを公的制度で削れるかが見えてきます。

在宅介護の月額相場と内訳

在宅介護の月額費用は、要介護度や利用するサービス量で5万〜10万円の幅に収まる家庭が中心です。生命保険文化センターの調査では平均5.3万円とされていますが、要介護3以上で訪問介護やデイサービスを毎日使うようになると月10万円を超えるケースが増えていきます。

内訳はおおむね次の4種類に分かれます。比率は家庭ごとに違っても、項目はほぼ共通です。

在宅介護で月にかかる費用の中身
  • 介護サービス費(訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルの自己負担1〜3割)
  • 食費・日用品費(おむつ・パッド・洗剤など消耗品の購入)
  • 医療費(通院・薬代・在宅医療)
  • その他(介護タクシー、通所先での実費、家族の交通費など)

このうち介護サービス費は介護保険の枠内なので、後述する高額介護サービス費で月額上限が決まっています。逆に食費・日用品・医療費は介護保険の対象外で、家計を直撃するのはこの部分です。

施設介護の月額相場と内訳

施設に入ると、家賃にあたる居住費と食費が必ず発生するため、月額は在宅より一段上がります。種類ごとの相場は2025年時点でおおむね次のとおりです。

施設の種類月額の目安主な費用構成
特別養護老人ホーム(特養)10万〜15万円介護サービス費・居住費・食費・日用品費
サービス付き高齢者向け住宅15万〜20万円家賃・管理費・食費・外付け介護サービス
介護付き有料老人ホーム15万〜35万円家賃・管理費・食費・介護サービス費

特養は公的施設のため最も安く、所得が低い世帯には食費と居住費の軽減(補足給付)も使えます。サ高住と有料老人ホームは民間運営で、立地と設備で価格差が大きく、東京23区の都心では月30万円を超える物件も出てきます。

有料老人ホームは入居一時金が数十万〜数千万円かかるケースもあり、月額だけでは判断できません。入居前にトータルコストで比較する視点が欠かせません。

何が高いのか・どこを下げられるか

支払いを項目別に分解すると、「制度で下げられる費用」と「自助で下げるしかない費用」がはっきり分かれます。

公的制度で削れる費用
  • 介護サービス費の自己負担(高額介護サービス費で月額上限が決まる)
  • 施設の食費・居住費(補足給付で所得区分ごとに軽減)
  • 医療費と介護費の合算(高額医療・高額介護合算療養費で年間上限)
  • 住宅改修費(介護保険から20万円まで補助)
  • 家族の収入減(介護休業給付金で賃金の67%を保障)
自助で工夫するしかない費用
  • おむつ・パッドなどの消耗品(自治体助成のある地域のみ軽減可能)
  • 家族の交通費・介護用品の買い替え
  • 施設の理美容代・娯楽費・嗜好品

家計を本気で軽くしたいなら、まず「制度で削れる費用」を全部洗い出してから自助の節約に進むのが順番です。次から順に、どの制度を最優先で使うべきかを整理します。

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最優先で使うべき公的制度

介護費を下げる制度はいくつもありますが、効果が大きく申請も比較的シンプルなものから手をつけるのが鉄則です。本サイトでは次の順番をおすすめします。

最優先で使うべき3制度の関係マップ
月単位・年単位・施設別で役割が違う
介護費を下げる3制度
月単位
高額介護
サービス費
● 対象:所得別
● 軽減:上限超返金
施設別
補足給付
(食費・居住費)
● 対象:住民税非課税
● 軽減:食居費減
年単位
合算療養費
(医療+介護)
● 対象:医療と併用
● 軽減:年間上限超返金
▶ 3制度は重ねがけできる。月の上限超過→年の上限超過→施設費の軽減、と違う層を救う。
  • 高額介護サービス費(月単位・全員対象)
  • 高額医療・高額介護合算療養費(年単位・医療費も多い世帯)
  • 補足給付(施設に入っている所得の低い世帯)

いずれも市区町村への申請が基本で、自動的には還付されません。「知らずに払いすぎている」家庭が多いのは、申請主義だからです。

高額介護サービス費(月額上限を超えた分は戻る)

高額介護サービス費は、1か月に支払った介護サービスの自己負担額が所得に応じた上限を超えたとき、超過分が戻ってくる制度です。2021年8月に高所得層の上限が引き上げられましたが、中所得以下の世帯は据え置きで、対象者は今も幅広く存在します。

所得区分(世帯)月額の自己負担上限
課税所得690万円以上140,100円
課税所得380万〜690万円未満93,000円
課税所得380万円未満(一般)44,400円
住民税非課税世帯24,600円
年金収入80万円以下など15,000円(個人)

例えば住民税非課税世帯で月3万円の介護サービス費を払っているなら、上限24,600円を超えた5,400円が戻ります。年間でみれば6万円以上の差になり、無視できる金額ではありません。

初回のみ市区町村から「支給申請書」が郵送され、口座を登録すれば以降は自動的に振り込まれる自治体が多い仕組みです。届いたら必ず提出するようにします。

補足給付(食費・居住費の軽減)

補足給付は、特養・老健・介護医療院といった介護保険施設に入っている所得の低い世帯に対し、食費と居住費を軽減する制度です。住民税非課税世帯が対象で、預貯金額の条件もあります。

対象になると食費と居住費が日額単位で大幅に下がり、月にして数万円の負担減につながります。サ高住や有料老人ホームは対象外で、あくまで公的な介護保険施設に限られる点が重要です。

所得区分の判定や預貯金要件は2021年と2024年に見直されており、毎年「介護保険負担限度額認定証」を更新する必要があります。詳しい区分や預貯金の基準額は補足給付の詳細を解説した記事にまとめてあるので、施設入居前後に必ず確認してください。

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高額医療・高額介護合算療養費(年単位の救済)

高額医療・高額介護合算療養費は、医療保険と介護保険の自己負担を1年分まとめて合算し、年間の上限を超えた分が戻ってくる制度です。算定期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、医療費も介護費も多い世帯ほど効果が大きくなります。

70歳以上の年間上限は、所得区分ごとに次のとおりです(協会けんぽ・厚労省資料より)。

所得区分(70歳以上)年間自己負担上限
現役並み所得III(課税所得690万円以上)212万円
現役並み所得II(課税所得380万〜690万円未満)141万円
現役並み所得I(課税所得145万〜380万円未満)67万円
一般所得56万円
低所得II(住民税非課税)31万円
低所得I(年金収入80万円以下など)19万円

例えば一般所得の世帯で、1年間に医療費と介護費の自己負担を合計70万円払っていれば、上限56万円を超えた14万円が後から戻る計算です。医療費が高い月と介護費が高い月がバラバラに発生する世帯ほど見落としやすい制度なので、年に1回は必ずチェックします。

申請窓口は、介護保険は市区町村、医療保険は加入する健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険なら市区町村の保険年金課になります。両方に書類を出す必要があるため、早めに動くのが安全です。

申請の優先順位と窓口

3つの制度はどれも還付型ですが、申請の重さと効果が違います。手をつける順番を整理しておきます。

手をつける順番
  • 高額介護サービス費 = 市区町村の介護保険課(毎月のサービス費に効く・申請書は自治体から郵送)
  • 高額医療・高額介護合算療養費 = 介護保険課+健康保険の窓口(年に1回・医療費が多い世帯ほど大きい)
  • 補足給付 = 市区町村の介護保険課(施設入居前に「負担限度額認定証」を申請)

いずれも市区町村の介護保険担当窓口が起点になります。地域包括支援センターのケアマネジャーに相談すれば、必要書類のリストを揃えてもらえます。「制度名がわからなくても、毎月の介護費の領収書と前年の所得が分かる資料を持って行けば話が早い」と覚えておくと動きやすくなります。

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在宅介護なら追加で使える制度

家で介護する場合、施設にはない出費(住宅の改修・家族の収入減)が発生します。一方で在宅ならではの公的支援も用意されていて、知っているかどうかで年間数十万円の差が出ます。

在宅介護向け制度の使いどころタイムライン
横軸=要介護度の進行 / 縦軸=介護負担の増加
↑ 負担増
● 早期(要支援〜要介護1)
住宅改修費20万円
手すり・段差解消など。動けるうちに申請して転倒リスクを下げる。
● 本格化(要介護2〜3)
介護休業給付金
最大93日休業中の所得を補填。仕事と介護の両立が崩れる時期に発動。
● 継続(全期間)
自治体独自助成
紙おむつ・住宅改修上乗せ等。居住地次第で常時併用できる。
要支援
要介護5 →
早期=住宅改修本格化=介護休業給付常時=自治体助成。発動タイミングが違うので順に押さえる。

住宅改修費20万円

要介護・要支援認定を受けている人が自宅をバリアフリー化するとき、介護保険から最大20万円まで補助が出ます。自己負担は所得に応じて1〜3割で、たとえば1割負担なら20万円の工事で実質2万円の支払いです。

補助の対象になる工事
  • 手すりの取り付け(廊下・階段・浴室・トイレ)
  • 段差の解消(スロープ設置・敷居の撤去)
  • 滑りにくい床材への変更
  • 引き戸への扉交換
  • 洋式便器への取り替え

原則として1人1回限りですが、要介護度が初回工事時より3段階上がった場合、または別の住宅へ転居した場合は、もう一度20万円の枠がリセットされて使えます。要支援1から要介護3に進んだ親、転居して別世帯に同居した親などは再申請の対象になります。

工事は必ず着工前に市区町村へ事前申請するのがルールです。事後申請は受け付けられないため、ケアマネと相談して見積もり段階から動くのが安全です。

介護休業給付金(働く家族向け)

介護のために仕事を休む家族には、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。休業開始時の賃金の67%が、対象家族1人につき通算93日まで支給され、しかも3回まで分割取得できます。

たとえば月給30万円の人が介護休業を取った場合、月およそ20万円が雇用保険から振り込まれます。「介護のために退職する前に、まず93日を使い切る」という考え方が家計のダメージを抑えるうえで重要です。

使うときに押さえる3点
  • 申請は勤務先経由でハローワークに提出
  • 1回最短でも数日から取得でき、入院対応や施設探しの集中期に充てられる
  • 家族1人につき通算93日(93日を3回までに分けられる)

正社員だけでなく、一定の条件を満たすパート・契約社員も対象になります。「うちは制度がない」と思い込まずに、まずハローワークか勤務先の人事に確認するのが先です。

自治体独自の助成

国の制度に上乗せして、市区町村が独自に運用している助成も無視できません。代表的なものは次の3つです。

  • 紙おむつ支給または購入費助成(月3,000〜6,000円相当が一般的)
  • 住宅改修費の上乗せ補助(介護保険の20万円に加えて自治体が一部補助)
  • 介護者への慰労金(要介護4以上を在宅で介護する家族へ年額数万円)

これらは自治体ごとに名称・金額・条件がバラバラで、しかも申請がないと受けられません。最も確実な調べ方は、地域包括支援センターに電話して「うちの市の在宅介護向け助成を全部教えてほしい」と聞くことです。窓口担当者がリストを持っていることがほとんどです。

介護休業給付金で収入が一時的に下がる期間は、家計の固定費を見直すチャンスでもあります。生命保険や医療保険を介護向けに組み替えるだけで月の支出が数千円単位で下がる家庭もあります。

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税金で取り戻す方法

介護保険の還付制度を申請したら、次は税金で戻す番です。確定申告で適用できる控除は意外と多く、医療費控除・障害者控除・扶養控除を組み合わせると、年間10万円以上の還付になる家庭も珍しくありません。いずれも申告しなければ自動では戻らないため、領収書を集めて毎年2月から3月に動く前提で準備します。

医療費控除の対象範囲(施設種別 × 費用種別)
費用種別 特養 老健 介護医療院 居宅サービス
介護費(自己負担分) 1/2対象 全額対象 全額対象 一部対象
食費 1/2対象 全額対象 全額対象 対象外
居住費(部屋代) 1/2対象 全額対象 全額対象 対象外
医療系サービス(訪問看護・リハビリ等) 全額対象 全額対象 全額対象 全額対象
日常生活費(理美容・娯楽等) 対象外 対象外 対象外 対象外
全額対象 1/2・一部対象 対象外
老健・介護医療院は施設全体が医療系扱いで食費・居住費まで全額対象。一方、特養は半額、居宅は介護費の自己負担分だけ。同じ介護でも控除の取り戻し額は施設で大きく変わる。

気をつけたいのは、施設の種類によって医療費控除に入れられる範囲が違う点です。同じ「介護施設」でも特養と老健ではルールが分かれるため、まずは早見表で自分の家庭の対象範囲を押さえます。

医療費控除(施設種別の対象範囲早見)

医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円(または所得の5%)を超えた分を所得から差し引ける制度です。介護保険サービスのうち、どこまでが医療費控除の対象になるかは国税庁の通達(No.1125)で施設種別ごとに決まっています。

施設・サービスの種類医療費控除の対象範囲
特別養護老人ホーム(地域密着型を含む)介護費・食費・居住費の自己負担額の1/2
介護老人保健施設(老健)介護費・食費・居住費の全額
指定介護療養型医療施設介護費・食費・居住費の全額
介護医療院介護費・食費・居住費の全額
居宅サービス(医療系:訪問看護・訪問リハ・通所リハ等)自己負担額の全額
居宅サービス(一部の福祉系:訪問介護・通所介護等)医療系と併用している場合に限り対象

特養は介護保険3施設のうち福祉色が強い分、医療費控除に入る部分が半分に絞られます。逆に老健と介護医療院は医療・リハビリの位置づけが明確なため、支払額の全額を医療費に算入できます。

在宅で訪問看護や通所リハを使っている場合は、その自己負担分も医療費控除に入ります。訪問介護やデイサービスといった福祉系サービスは単独では対象外ですが、医療系サービスと一緒に利用している場合は同じ事業者の領収書にまとめて記載されることがあり、ケアマネが「医療費控除対象額」を毎年1月にまとめて発行してくれる仕組みになっています。

医療費に合算できる費用
  • 施設の介護費・食費・居住費(施設種別で1/2か全額)
  • 通院の交通費(公共交通機関・付き添いも含む)
  • 処方薬・市販薬(治療目的のもの)
  • おむつ代(医師の「おむつ使用証明書」がある場合)
  • 訪問看護・訪問リハ・通所リハの自己負担

領収書は5年間の保管義務があります。施設は毎年1月に年間支払額をまとめた書類を発行するため、紛失したら早めに再発行を依頼します。家族が立て替えた医療費も、親と生計を一にしていれば家族側の確定申告でまとめて控除できます。

障害者控除対象者認定書(最大5年遡及)

障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で要介護認定を受けている親なら、市区町村から「障害者控除対象者認定書」を発行してもらえます。この認定書を確定申告に添付すると、所得税で27万円(特別障害者は40万円)、住民税で26万円(特別障害者は30万円)の障害者控除が使えます。

多くの自治体は要介護1〜5の認定がある人を対象としていますが、判定区分は自治体ごとに細かく異なります。一般的な目安は次のとおりです。

状態の目安該当する控除区分
要介護1〜3で日常生活に介助が必要障害者控除(27万円)
要介護4〜5で常時介護が必要・寝たきり特別障害者控除(40万円)
認知症高齢者の日常生活自立度がIIIb以上特別障害者控除(40万円)の対象例

申請は市区町村の高齢者福祉課か介護保険課が窓口で、本人または家族が認定書の交付申請書を提出します。要介護認定の主治医意見書をもとに自治体が判定するため、追加で医師の診断書を求められないケースが多く、手続きは比較的軽めです。

強力なのが遡及適用です。確定申告の還付申告は5年前まで提出できるため、認定書を取得したらまず過去5年分の所得をさかのぼり、それぞれの年で障害者控除を入れた申告書を作り直して還付請求できます。年27万円の控除が漏れていた家庭なら、所得税と住民税を合わせて1年あたり数万円、5年で十数万円の還付になる計算です。

「親が要介護認定を受けてからずっと申告していなかった」という家庭ほど、この遡及還付の効果が大きくなります。介護が始まった年から数えて、まだ5年経っていないか必ず確認してください。

扶養控除・社会保険料控除の家族内調整

親の介護費を負担している家族なら、扶養控除と社会保険料控除も組み合わせて使えます。同居していなくても、仕送りや施設費の振込を継続していれば「生計を一にする」と認められ、扶養に入れられる場合があります。

親を扶養に入れる主な条件
  • 親の年間合計所得が48万円以下(公的年金のみなら70歳以上で年158万円以下)
  • 生計を一にしている(同居・別居どちらでも可・別居なら継続的な仕送りが必要)
  • 親自身が他の人の扶養に入っていない
  • 青色・白色事業専従者として給与を受け取っていない

70歳以上の親を扶養に入れる場合、同居なら58万円、別居なら48万円の同居老親等扶養控除・老人扶養控除が使えます。住民税ではそれぞれ45万円・38万円です。所得税率が20%の家族が同居老親で扶養に入れれば、所得税だけで年11万円以上の節税になります。

社会保険料控除も見落としやすいポイントです。親の介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料を家族が口座振替や現金で実際に払っていれば、その全額を払った人の社会保険料控除に算入できます。年金から天引きされている保険料は親本人の控除になるため、家族が肩代わりするなら口座振替への切り替えを市区町村に申請しておきます。

家族内で誰が控除を取るかは、所得税率の高い人に寄せるのが基本です。共働きで夫婦のどちらも親と生計を一にしているなら、税率の高いほうに扶養と社会保険料控除を集めれば家族全体の手取りが増えます。きょうだいで親の費用を分担している家庭でも、まとめて1人が支払う形にして領収書を集約すると控除が大きくなります。

まだ厳しい場合の選択肢

公的制度と税控除を全部使い切ってもなお家計が回らないとき、次に検討するのが「世帯の形を変える」「施設を変える」「最後のセーフティネットを使う」の3方向です。順番に重さが上がるため、軽い手段から確認します。

制度活用後もまだ厳しい場合の検討順
起点
公的制度を使っても毎月赤字
STEP 1
社福軽減・世帯分離
いつ:住民税非課税世帯・低所得世帯に該当しそうなとき/対象なら即適用
対象外・効果不足なら ▼
STEP 2
特養への転居検討
いつ:要介護3以上で有料・サ高住の費用負担が限界に近いとき/申込から数ヶ月〜数年
転居しても支えきれないなら ▼
STEP 3
生活保護の併用
いつ:預貯金・収入とも基準以下で他に手段なし/最終手段
所得・要件で「使える順」が決まる。先に軽減で家計を立て直し、ダメなら住む場所を変え、最後に生活保護。順番を飛ばして相談すると窓口で差し戻されるので、上から検討するのが近道。

社会福祉法人軽減と世帯分離

社会福祉法人等利用者負担軽減制度(社福軽減)は、社会福祉法人が運営する特養や訪問介護・通所介護を利用する低所得世帯向けに、利用料・食費・居住費を1/4軽減する制度です。老齢福祉年金受給者は1/2軽減になります。

社福軽減の主な要件
  • 住民税世帯非課税であること
  • 年間収入が単身150万円以下(世帯員1人増えるごとに50万円加算)
  • 預貯金が単身350万円以下(世帯員1人増えるごとに100万円加算)
  • 活用できる資産がない・親族に扶養されていない
  • 介護保険料を滞納していない

申請は市区町村の介護保険課が窓口で、認められると「確認証」が交付されます。これを社会福祉法人の事業所に提示すれば、その月から自己負担が1/4減ります。民間運営の有料老人ホームやサ高住は対象外で、あくまで社会福祉法人運営の事業所限定です。

世帯分離は、同居している親と子を住民票上で別世帯にする手続きです。親世帯だけで住民税非課税になれば、補足給付や高額介護サービス費の上限が下のランクに切り替わり、月数万円単位の負担減につながります。社福軽減の収入要件もクリアしやすくなります。

世帯分離の注意点
  • 親を税法上の扶養から外すと、家族側の扶養控除が使えなくなる
  • 会社の家族手当や健康保険の被扶養者から外れる場合がある
  • 国民健康保険料は世帯主にまとめて請求されるため、世帯主の保険料負担が増える可能性がある

差し引きで本当に得になるかは、家族の所得と介護費の金額しだいです。市区町村の窓口で「世帯分離した場合の介護費・国保・税金のシミュレーション」を相談してから動くのが安全です。

特養への転居

民間の有料老人ホームに入っていて月20万〜30万円の負担が重い場合、公的施設である特別養護老人ホーム(特養)への転居が現実的な選択肢になります。特養の月額は10万〜15万円に収まる家庭が中心で、民間有料のおよそ半額です。補足給付や社福軽減を併用すれば、住民税非課税世帯は月7万円前後まで下がります。

入所要件は原則として要介護3以上です。要介護1〜2の人は、認知症や家族の介護力不足など特例事由がある場合のみ入所が認められます。地域によって待機期間が長いため、入居の見込みが立つまで現在の施設を継続する判断も必要です。

申し込みは複数の特養に同時並行で出すのが定石で、ケアマネに「広域型・地域密着型を含めて入りやすい施設リスト」を作ってもらうとスムーズです。特養への転居だけで解決しない場合は、親の施設費用が払えない時の対処法で出口手段を一通り点検しておきます。

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生活保護の併用

最後のセーフティネットが生活保護です。年金や貯蓄が底をつき、家族からの援助も期待できない場合に、最低生活費との差額が支給されます。介護扶助という枠が用意されており、要介護認定があれば介護サービスの自己負担分はそのまま生活保護費でカバーされます。

生活保護を受給しながら入居できる施設は限られますが、特養・養護老人ホーム・一部のサ高住・生活保護対応の有料老人ホームに入る道はあります。施設の家賃は住宅扶助の上限内に収まるよう、自治体のケースワーカーと相談して物件を探します。

本人だけでなく、扶養義務のある家族にも調査が入る点はあらかじめ覚悟しておきます。とはいえ家族の収入が一定以上なくても受給は認められるケースが多く、「申請の前に諦める」のがいちばんもったいない選択です。判断材料が足りないと感じたら、生活保護で施設入居を検討する記事で要件と流れを確認してから福祉事務所に相談します。

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申請スケジュールまとめ

ここまで紹介した制度は、それぞれ申請のタイミングが違います。入居前にやるもの、毎月チェックするもの、確定申告の時期にまとめてやるものの3つに整理すると、抜け漏れがなくなります。最後にカレンダー感覚で全体像を確認します。

申請スケジュール年表(入居前 → 毎月 → 確定申告期)
PHASE 1
入居前
一度だけ/早めに
要介護認定
市区町村に申請/全制度の入り口
負担限度額認定
食費・居住費の補足給付を受けるため
障害者控除認定書
確定申告で使う/最大5年遡及可
PHASE 2
毎月
入居後ずっと継続
高額介護サービス費
上限超過分を還付/初回申請後は自動
領収書の保管
医療費控除・合算療養費の証拠書類
自己負担割合の確認
所得変動で1〜3割が切り替わる
PHASE 3
確定申告期
1月〜3月
医療費控除の申告
前年の領収書を集計/所得税が戻る
障害者控除の適用
認定書を添付/扶養者の申告で使える
扶養控除の家族内調整
所得の高い家族につけ替えると還付増
入居前にやり忘れると毎月の補足給付が受けられず、毎月の保管を怠ると確定申告で取り戻せない。3つの段階は前の段階の準備が次の還付額を決める仕組みになっている。

入居前にやっておくこと

施設に入る前後の数か月は申請が集中します。施設探しと並行して、市区町村窓口で次の手続きを片付けておくと、入居初月から制度が効きます。

入居前に終わらせたい申請
  • 要介護認定の申請(市区町村介護保険課・結果通知まで約30日)
  • 介護保険負担限度額認定証の申請(補足給付・施設の食費居住費が下がる)
  • 障害者控除対象者認定書の申請(高齢福祉課・税の準備)
  • 家族間で誰が扶養に入れるか・誰が保険料を払うかの整理
  • 世帯分離が必要か市区町村窓口でシミュレーション

要介護認定はすべての制度の入り口です。まだ申請していない家庭は、地域包括支援センターに電話するのが最初の一歩になります。負担限度額認定証は毎年7月末に更新が必要で、忘れると翌年8月以降の食費居住費が一時的に満額に戻る点に注意します。

毎月のチェック

入居後は、月単位で次の3点を確認する習慣をつけます。仕組みで自動化しておくと、忙しい時期でも漏れません。

毎月の3つの動き
  • 高額介護サービス費の還付通知が届いていないか確認(初回のみ書類提出が必要)
  • 介護費・医療費・通院交通費の領収書をクリアファイルにまとめる
  • 収入や預貯金が大きく変わったら市区町村に申告(補足給付の区分が変わる)

領収書は施設の月次明細・薬局のレシート・通院の交通費メモを月別に分けて保管します。1年分まとめて12月に整理しようとすると、必ず紛失や記憶違いが起きます。月末に10分だけ仕分けの時間を取るのが結果的に一番ラクです。

親の収入や預貯金が変わった、家族の同居状況が変わったときは、放置せず市区町村窓口に申告します。負担限度額認定証や社福軽減の確認証は条件が変われば再判定が必要で、申告が遅れると過去にさかのぼって返還を求められることがあります。

確定申告期にまとめてやること

毎年2月16日から3月15日の確定申告期は、税で取り戻すラストチャンスです。1年分の領収書と認定書を持って、次の控除を漏れなく適用します。

確定申告でまとめて適用する控除
  • 医療費控除(施設の年間支払額・通院費・薬代を合算)
  • 障害者控除(認定書の写しを添付・特別障害者なら40万円)
  • 同居老親等・老人扶養控除(親を扶養に入れた家族側で適用)
  • 社会保険料控除(家族が払った介護保険料・後期高齢者医療保険料を合算)
  • 過去5年分の還付申告(漏れている控除があれば年度ごとに作成)

過去5年分の遡及還付は意外と知られていません。「介護が始まったのは3年前だけど一度も医療費控除を出していなかった」という家庭なら、3年分の還付申告書を作って税務署に郵送するだけで、数万円から十数万円が戻ってきます。e-Taxを使えば自宅から提出でき、年度ごとにフォーマットを切り替えながら作成できます。

確定申告書の作成に不安があれば、税務署の無料相談会や、地域包括支援センターが紹介する税理士の無料相談を活用します。介護費の領収書・年金の源泉徴収票・障害者控除対象者認定書の3点さえそろえれば、その場で書類を完成させてもらえる地域も増えています。

制度はどれも申請しなければ動きません。要介護認定・負担限度額認定証・障害者控除対象者認定書の3つを取って、毎月領収書を仕分けし、確定申告期にまとめて控除を入れる。この流れを家族内のルーティンにすれば、年間で数十万円の支出を確実に圧縮できます。

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