介護が必要になる状況というのは、高齢者本人にとっても、その家族にとっても未知の出来事であることがほとんどです。
公的な介護サービスは案外たくさんあるのですが、介護サービスは待っていても向こうからやってくることはありません。
利用者側が
- 情報収集
- サービスのイメージづくり
- 申請(介護保険の場合は要介護認定という手続きも)
- 事業者の選択
などさまざまな行動をして、初めて必要なサービスがやってくるのです。
介護が必要になった場合、まず、どこに行ったらよいのでしょうか。
誰が相談に乗ってくれるのでしょうか。
基本となる4つの相談先
- ずっと家族だけで看てきたんですけど、もう限界。何から調べたらいいの?
- 地方で1人暮らしの親が認知症っぽくなってきたので都内に呼ぼうと考えてる。何から準備したらいいの?
- 相談というほどでもないけれど、介護について分からないことを聞いてみたい。
このような介護について困ったときの相談先は次のとおりです。
- 市役所の高齢者支援課
- 地域包括支援センター
- 社会福祉協議会(社協)
- 民間の紹介センター
市役所の高齢者支援課
行政窓口のよいところは、その場で申請が可能なことです。
サービスが必要な高齢者の「介護保険証」を持参することが望ましいのですが、本人の住所と生年月日を知っていれば、介護保険証なしでも申請を受け付けてくれることが多いようです。
介護保険証は65歳になると行政から送られてきます。
40歳~64歳の方でも、認知症など特定の状態が認められる場合、申請すれば介護保険証が発行されて、介護保険サービスを受けることができます。
介護保険の場合、市区町村が「保険者」なので、市区町村は事業所の情報を豊富に持っています。
サービス開始後、疑問が生じた場合や制度の仕組みがよくわからない場合に、説明を受けることができます。
地域包括支援センター
地域包括支援センターには保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが配置されています。
それぞれがチームとなって地域の高齢者の自立した生活支援や人間らしく生きられることの支援、および地域住民の相談を幅広く受け付けて支援を行います。
地域包括支援センターの利点は、希望により職員が家庭訪問をしてくれること。
外出が難しい高齢者の場合、状態を見てもらったうえで相談できるのは心強いです。
また、自分の家のことだけではなく、近隣の心配についても相談に応じてくれます。
「隣りの高齢者の姿が、最近見えないのだけれど……」とか、「向かいの家で、高齢者が家族からひどく怒鳴られていて、心配」などの場合には、地域包括支援センターを知っておくと役に立ちます。
- 介護予防ケアマネジメント業務
- 総合相談支援業務
- 権利擁護業務
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
地域包括支援センターでは相談料などは必要ありません。相談は無料です。
ただし管轄する地域が決まっているので、居住している地域を管轄している地域包括支援センターに行かなくてはなりません。
地域包括支援センターは「高齢者あんしん相談センター」など、各地域で別の名称で呼ばれているところもあります。住んでいる場所の自治体に確認しましょう。
介護予防ケアマネジメント業務
対象者
- 対象者要支援1、2の高齢者
- 支援や介護が必要となる可能性が高いと判断された高齢者
要支援1・要支援2の高齢者には介護予防ケアプランを作成し、介護予防のためのサービスを利用する支援が行われます。
要支援や要介護になる可能性が高いと判断される高齢者には介護予防のための
- 運動機能を向上させる教室の紹介
- 嚥下機能が低下に備えて口腔機能を向上させる教室の紹介
などが行われます。また、介護予防ケアプランの作成も行われます。
総合相談支援業務
高齢者が住み慣れた地域で人間らしく自立した生活を送るためには、高齢者個々に対する支援とともに、それだけではなくボランティア活動など生きがいを持てる支援も必要とされています。
そこで総合相談支援業務では
- 地域におけるネットワーク構築
- 地域の実態把握
- 幅広い相談に対応
の業務を行って介護に関する相談や悩み以外にも、福祉や医療、生きがいなどいろいろなことの相談に対応します。
権利擁護業務
高齢者が安心して暮らすためには、高齢者の権利が十分に守られていなければなりません。
高齢になると判断能力が劣ってくるのでだまされやすくなります。
そこで、高齢者の権利擁護業務として資産の管理を安全にできる成年後見制度の紹介や、高齢者に対する虐待防止を他の機関と提携して行います。
包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
地域包括支援センターが中心となって、地域の介護支援専門員や主治医をはじめ、様々な福祉・医療の関係者と連携し、高齢者の生活を支援。
社会福祉協議会(社協)
社会福祉協議会(社協)は、高齢者や障害者の在宅生活を支援するために、ホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスをはじめ、さまざまな福祉サービスをおこなっています。
そのほか、多様な福祉ニーズに応えるため、それぞれの社協が地域の特性を踏まえ創意工夫をこらした独自の事業に取り組んでいます。
介護のことで何か困ったことがあれば、社会福祉協議会に相談を持ち掛けてみると解決してくれたり、福祉機関に繋いでくれることがあります。
もし自身が介護のことで困った、家族が困っている場合は社会福祉協議会に行くと助けてくれます。
民間の紹介センター
地域包括支援センターのような公的機関の場合、紹介できる介護施設が少なく、希望する種類の施設を見つけられない場合があります。
そのような状況で役立つのが、幅広い情報網を持った民間の紹介サービスです。
複数の施設を比較しながら検索できるので、気になる施設を見つけやすいのがメリット。
資料請求も無料ですし、何から始めていいか分からない場合は経験豊富な相談員が聞き取りから適切な施設の紹介をしてくれます。
民間サービスではありますが、紹介料は介護施設から徴収しているため、老人ホームに入る人や入ろうとしている人がお金を取られることはありません。
経験豊富な担当者が在籍している相談所であれば、有益な情報を気軽に入手することができます。
専門性の高い相談員に相談できる
紹介センターに勤めている職員は、専門的な知識に長けた相談員ばかりです。
施設の種類ごとの特徴についても当然のように熟知しています。
特定の施設の設備や雰囲気に関する情報等も持っていますので、有益な情報を入手できることもメリットです。
入居後のアフターフォローも受けられる
良いと思って入居を決めた施設でも、入居後に想定外の事態が起きたり、トラブルに巻き込まれたりする可能性はゼロではありません。
こういった場合には、相談した紹介センターからのアフターフォローを受けられますので、安心して入居先を選ぶことができます。
利用が無料
紹介センターは、紹介を行っている介護施設から広告料等を受け取ることによって運営を行っています。
そのため、介護を受ける側の方がお金を支払うことは基本的にありません。
相談だけでも、紹介を受けた老人ホームに入居を決めても料金は無料です。
介護施設のホームページなどから在籍している職員の数や質、設備の内容、料金などの情報を集めることができます。
特徴が見やすくまとめられていますので、ネットの情報を参考にしながら施設選びを行うのもおすすめです。
ネットならではの特徴は、気軽に多くの施設をチェックできるという点になります。
職員の性格や施設内の雰囲気など、気になる情報が手に入る可能性があることもメリットです。