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【高齢者施設どう選ぶ】介護施設の死亡事故数、自治体の6割が非公表

読売新聞のアンケート調査によると、特別養護老人ホーム(特養)や介護施設の約6割が死亡事故の件数や原因を公表していないことが分かりました。

2021年度は、106自治体だけで計1,159名の入居者が事故で死亡

調査は6~7月、政令市と中核市、県庁所在地、東京23区の計109市区にアンケート形式で実施し、介護事故の統計に関する公表の有無、事業者から報告を受けた昨年度の事故による死者数などを尋ね、106自治体が回答。

死者数などについて、市のホームページや広報紙で公表しているのは20市区(19%)。

21市区(20%)は再発防止に役立てるため、事業者を集めて指導する際に公表していました。

65市区(61%)は公表していませんでしたが、横浜市は「再発防止に重要な情報のため、今後は公表していきたい」(高齢施設課)としています。

介護施設の死亡事故公表状況
市のホームページや広報紙で公表
19%
事業者を集めて指導する際に公表
20%
非公表
61%

介護保険法に基づく運営基準では、施設や事業所から市区町村への事故報告を義務付けている一方で、自治体には事故件数などの公表義務はなく、国も事故の全国集計は行っていません。

効果的な事故防止対策の策定に役立つため、87市区(82%)が「国による取りまとめが必要」と示しています。

2021年度に介護事故で死亡した1,159人の原因の内訳は、食事介助中に食べ物が気管に入る誤嚥が679人(59%)と最多で、転倒・転落が159人(14%)でした。

事故の起きる背景(複数回答)では、79市区(75%)が、介護現場の「人手不足」を挙げました。

職員が業務に追われ、注意の行き届かないことが事故の発生につながる実情が浮かび上がった結果ともいえます。

目次

現場職員の35%が配置人数が不足と回答

人手不足によって、入居者へのサポートや見守りが十分に行えていない状況は深刻で、2035年に必要となる介護職員の数は295万人と予測されており、これは2013年時点の171万人から1.7倍となる人数です。

また、国が想定している介護現場の状況と、実情が一致していないという点も、事故が発生する原因のひとつです。

今回問題となった特養に関して言えば、国の定めた人員基準は入居者1人に対して3人の介護職員が付くと定められています。

介護報酬額は、この人員基準を基準として設定されており、増員した場合は経営がかなり厳しいものとなってしまうのです。

しかし、実際の現場でこのシフトを採用すると、人手不足の状況になる場合がほとんどで、入所者に対するサポートなどが手薄になってしまうことは避けられず、事故が発生しやすくなってしまいます。

白梅学園短期大学が行った調査研究で、介護施設を対象として「事故のない介護現場となるためになにが必要か」というアンケートを実施したところ、配置人数に関して不足という回答が35%で最多となったそうです。

こうした制度や構造の問題が、事故を誘発する状況を作り出しているのです。

>>白梅学園短期大学 介護事故調査が析出させた「介護周辺」の課題

その一方で、介護事故の特徴として、

  • 事業者や職員の責任・過失
  • 利用者(高齢者)の側に原因がある

さらにそれらがどのように絡み合って生じたのか、非常に分かりにくい・判断しにくいという点があります。

このことから、事故の起きた事業者名やその件数などだけが安易に公表されれば、単にその「事業者が悪い」「あの施設の介護の質が悪い」という風評につながるなど、情報を正しく解釈できない市民・高齢者も少なくないはずです。

それを懸念した自治体は、介護事故について公表をしていないとも捉えられます。

このような施設は要注意

入居を検討している施設には事前に見学に行くのは必須です。

チェックポイント
  • 常にスタッフ募集をしている
  • スタッフに笑顔がなく殺伐としている
  • 清掃が行き届いていない

常にスタッフ募集をしている

介護は人手不足の業界ではありますが、常にスタッフを募集している施設は、人材がなかなか定着しないから募集していると考えていいでしょう。
 
しかしそれだけで「入居はやめた方がいい」と判断はできません。

気になる施設であれば施設見学をさせてもらい施設の雰囲気を実際に見てみるのもよいでしょう。

>>職員の勤続年数を把握する方法

資料請求時の備考欄に「重要事項説明書の同封希望」と記載すれば手に入れられます。

同封されていなければ、改めて電話で請求するのも可能です。

以下から気になる施設の資料を請求できます。

スタッフに笑顔がなく殺伐としている

施設見学には職員の服装、働く様子をよく見ておきましょう。

また、利用者との接し方はどうか、施設全体の雰囲気が殺伐としていないかなど、よく観察することをおすすめします。
 
こちらが挨拶や会釈をしても目が合わない、全く笑顔が見られないなどが見受けられる場合、人手不足で職員が疲弊していたり、労働環境に不満を抱えていたりということも考えられます。

>>見学のおすすめ時間はお昼の12時

清掃が行き届いていない

清掃やメンテナンスが行き届いていない介護施設は要注意です。

介護施設は高齢者の方の命を預かる場所。

介護サービスを提供する施設として不衛生な場所であってはいけません。
 
施設見学の際には、

  • ゴミやホコリがたまっていないか
  • 整理整頓されているか
  • 汚物臭はないか

といった点をチェックしましょう。

もし施設で事故が起きたら・・厚労省「5日以内に報告を」

介護施設で万が一の事故が起きてしまった際の報告について、厚生労働省が統一的な報告書の様式を新たに作成しました。>>介護保険最新情報のVol.943

特養、老健、介護医療院などの施設は、例えば転倒や転落、誤嚥・窒息、誤薬といった事故を自治体へ報告するよう定められています。

ただ、報告の基準は市町村によってまちまち。情報提供の範囲などにも違いがあり、現場の関係者から改善を求める声があがっていました。

統一的な報告書の整備には、事故の状況などをより詳しく比較・分析できるようにする狙いもあります。

これを有効な再発防止策の展開につなげていく方針が、2020年末の審議会の報告書に盛り込まれています。

厚労省は今回の通知で、原則として必ず報告すべき事故の対象範囲として、

  • 死亡に至った事故
  • 医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬や処置など何らかの治療が必要となった事故

の2つを明記。「その他の事故の報告は、各自治体の取り扱いによるものとする」との認識を示しました。

厚労省は報告書の様式を、

  1. 事故状況
  2. 事業所の概要
  3. 対象者
  4. 事故の概要
  5. 事故発生時の対応
  6. 事故発生後の状況
  7. 事故の原因分析
  8. 再発防止策
  9. その他(特記事項)

で構成。施設は「遅くとも事故発生後5日以内を目安」に、このうち1から6までを「第1報」として報告すべきと規定しました。

残りの7以降については、「作成次第報告すること」としています。また、「報告書は電子メールによる提出が望ましい」とも記載。

厚労省はこの様式を、グループホームや特定施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などにも使うよう要請し「居宅サービスの事故報告でも可能な限りご活用頂きたい」と呼びかけています。

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