家族で納得できる施設が見つかったら、いよいよ契約です。
日常生活では見慣れない契約書や重要事項説明書など、とっつきにくい書面を読み込むのは大切です。
入居後に「こんなはずじゃなかった」とならないように最終確認も抜かりなく行いましょう。
契約形態と利用料の支払う方法を確認
高齢者向けの施設にはいくつかの契約形態があります。
- 利用権方式
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居住費、介護サービスの利用料、生活支援の利用料などの契約が一体化となっている方式
- 建物賃貸借方式
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賃貸住宅における居住の契約形態。居住部分と介護などのサービス部分の契約が別々になっている方式
- 終身建物賃貸借方式
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賃貸借方式で、特約によって入居者の死亡をもって契約を終了するという内容が有効になる方式
利用権方式
有料老人ホームの多くが採用しているのが利用権方式の契約です。
入居の際に一時金を支払うことで、終身にわたり居室と供用施設を利用できる権利と、介護や生活支援サービスを受ける権利を保障されます。
また、入居中に本人の身体状況の変化(要介護度が上がるなど)があった場合、退去しなければならないこともあります。
これについては契約時によく確認しておいてください。
「利用権方式」には根拠法はなく、施設と入居者の間での契約であり、どちらかといえば施設側に有利な契約です。
何らかのトラブルが発生した場合に施設側から契約解除できる項目が設けられていることが一般的です。
入居中に経営者が変わった場合、その契約内容は継承されません。
利用権方式のメリット
- 終身に渡る利用権を取得できる
- 契約を1つ結ぶだけで、住む権利+サービスを受ける権利を同時に契約できる
- 償却期間内に退去する事になった場合、未償却分のお金が返還される
利用権方式のデメリット
- 施設側に有利な契約
- 契約者の死亡と同時に権利は消滅し、親族に相続されない
建物賃貸借方式
建物賃貸借方式は、家賃に相当する額を毎月支払うことを約束に、賃貸物件などで生活する権利を得ることを示します。
建物賃貸借方式の大きな特徴は、居住部分と介護サービスが別々になっている点です。
そのため、介護サービスが必要になった時は、別のサービス事業者と契約して利用しなければなりません。
建物賃貸借方式は賃貸借家法という法律によって入居者の権利が非常に強く守られています。
例えば、夫が契約者となって夫婦で入居契約した場合、もし夫が亡くなっても妻に借家権が相続されるので、引き続き生活することが可能です。
建物賃貸借方式では想定入居期間の利用料を前払いする必要はなく、入居にあたりかかる費用は敷金や礼金だけです。
介護サービスの利用も任意である分、月額料金の負担を軽減できます。
ただし、定期的に更新手続きや更新手数料の支払いが必要になる場合があります。
この契約は経営者が変わっても契約は継承されます。
契約する際はその施設がどういう契約形態なのか確認しておくことは非常に重要です。
建物賃貸借方式のメリット
- 初期費用が安い
- 借家権を親族に相続できる
- 事業者側の都合で退去させられない
建物賃貸借方式のデメリット
- 月額料金が割高になるケースがある
- 更新手数料が必要な施設もある
4つの利用料の支払い方法
入居が決まり手続きとなった際に、施設側から「支払いは全額前払い方式にしますか、それとも月払い方式にしますか」と経費の支払い方法を聞かれることがあります。
それぞれに長所・短所があるので、検討してからどちらを選ぶかを決めましょう。
入居一時金を設定している施設では、下の説明のように4つの支払い方法があります。
入居後に支払う金額が大きく違ってくるので、契約の際に支払い方法がどれに該当するかを確認しておくのも大切です。
- 全額前払い方式
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終身にわたり施設に居住することを前提に必要な家賃を入居時に一括で支払う方式
- 月払い方式
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前払金を納めず、利用期間中は毎月家賃を払い続ける方式
- 一部前払い・一部月払い方式
-
終身にわたり必要な家賃などの一部を前払い金として支払い、その他は月払いする方式
- 選択方式
-
入居者が「全額前払い方式」「月払い方式」「一部前払い・一部月払い方式」を選ぶ方式
全額前払い方式は、入居時に家賃を全額(または一部)支払います。
施設が想定している居住年数をこえたとしても追加で費用は発生しないケースが多いため、支払い総額を考えるとお得になります。
一方、月払い方式は最初にまとまった費用が必要ではないメリットはあります。
しかし、居住年数が長くなるほど、入居一時金方式と比較すると割高になってしまいます。
入居時点でどのくらいの資金が準備できるかではなく
- どれくらいの期間入居する予定なのか
- 毎月の費用はいくらであれば支払いが可能か
といった入居後の見通しをある程度たてたうえで、支払い方式を選択しましょう。
施設の経営状態を確認するポイント
入居後すぐに倒産や廃業は避けたいものです。
入居率や職員の定着率は経営状況の判断材料のひとつです。
入居率と職員の定着率を確認
施設の入居率は経営状態をチェックする際のひとつの目安になります。
例えば、有料老人ホームの収益分岐点は開設後2年で入居率80%程度といわれています。
それより低い場合は、その理由を聞いてみましょう。
有料老人ホームの入居率は平均すると85.1%となります。
介護付ホーム、住宅型ホームのいずれも平均は85%前後の入居率となっており、いずれの種別の施設でも半数以上が70%以上の入居率となっています。
ただ、住宅型ホームの約1割が50~70%未満の入居率となっている施設があり、住宅型ホームは供給過多となりつつあるとも考えられます。
職員が平均何年勤務しているかの定着率も安定した運営がされているか判断の手がかりになります。
入居率と職員の定着率は重要事項説明書で確認できます。
事業者が複数の施設を運営している場合、入居を考えているところだけでなく、他の施設の重要事項説明書にも目を通しておきましょう。
途中で経営者が変わっていることもあるので、その場合には理由を聞いてみましょう。
不明な点があれば、職員に遠慮せずに説明を求めてください。
必要に応じて財務諸表をチェック
施設以外の経営を多角的に行なっている事業所も多数あります。
事業者の主要な事業を確認し、必要であれば財務諸表などの経営情報の公表を求め、その事業者の事業全体の経営が軌道に乗っているか確認できると安心です。
公益社団法人全国有料老人ホーム協会では、加盟ホームの決算書の閲覧が可能です。
決算書類等は、金融機関に勤めている人、経理関係の事務経験のある人なら概ね読むことができます。
親族にいるようならみてもらうと良いでしょう。
不安な場合は公認会計士に相談する方法もあります。
決算書だけでは万全とは言えず、書面上は問題なくても、倒産や開業になるケースもあります。
- 施設の主な運営事業
- 施設の設立年月
- 設立時から経営者の変更
(変更した理由) - 入居者の人数と入居率、退去者の状況
- 職員の人数と勤続年数、定着率
- 軽状況を確認できる財務諸表を公開しているか
必ず目を通すべき重要事項説明書の内容をチェック
老人ホームに入居する場合、施設側と入居契約を取り交わす前にしっかりと内容をチェックしておくべきなのが「重要事項説明書」です。
老人ホームの情報は、ホームページやパンフレットにも掲載されていますが、そこには書けない情報も当然ながらあります。
そうした情報が掲載されているのが、重要事項説明書です。
重要事項説明書は契約書や規約のように細かな文字で書かれているため、つい見落としてしまいがちです。
ですが、この重要事項説明書をしっかりとチェックしておかないと、入居後に大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
特別養護老人ホームなどの公的施設か、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設かに関係なく、重要事項説明書は入居契約を希望する利用者に向けて必ず作成され、施設職員による説明も行われます。
施設の概要が一目でわかる
重要事項説明書には施設の概要や職員の配置状態、サービス内容、費用など施設選びに欠かせない情報がまとめられています。
高齢の方が自身で比較検討できるように厚労省や都道府県では「わかりやすく」表記するように指導しています。
複数の施設のものを読み比べると内容が理解しやすくなります。
- 施設の概要
- 職員の配置状態
- サービス内容
- 費用
- 協力医院の医療体制
- 住み替えが必要になった時の理由
- 入居・退去の必要条件
職員の勤続年数を把握
下の画像は東京都の有料老人ホームの重要事項説明書です。
以下に重要事項説明書から確認できることをまとめました。
- 類型:介護付き
- 権利形態:利用権方式
- 支払い方式:選択方式
- 介護保険:特定施設入居者生活介護(一般型)
定員174人に対して部屋数が137人なので、
- 個室が100部屋
- 夫婦や親族と暮らせる相部屋が37部屋
となっています。
さらに下の画像は職員の職種別勤続年数の項目を確認してみましょう。
- 利用者1名に対して職員の配置が1.2名
- 職員の勤続年数は1年未満が1名
- 看護職員の常勤が4名
- 介護職員の常勤が23名
勤続年数3年以上の職員が、全体42名の中32名もいるのでまずまずの定着率だといえるでしょう。
また、利用者1名に対して職員の配置が1.2名は、法定で定められた3名より充実していることも伺えます。
入居者の状況をチェック
下の画像の入居者の項目を見ていきましょう。
男女別の入居者の数、平均年齢を知ることができます。
その入居者の要介護度もわかるので、親の現状と比較できます。
また、直近1年に退去した方の人数と理由が記載されているのが下の画像です。
退去先が自宅なのか、入院したのか、亡くなったのかが分かります。
さらに入居率の欄も見落とさないようにしましょう。
8割を切っている場合は理由を聞いてください。
利用料金の確認
入居時に支払う費用、および入居後に毎月支払っていく利用料金に関する項目です。
上記しましたが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のような民間施設の場合、居住の権利形態(利用権方式、建物賃貸借方式、終身建物賃貸借方式)や利用料金の支払い方式・料金プランなども書かれています。
入居一時金についても、具体的な金額が書かれているので要チェックです。
利用料金については、算定根拠として費用の内訳も書かれています。
お金のことは入居後にトラブルを生みやすいので、疑問点がある場合は、遠慮なく施設の職員に質問しましょう。
とくに、入居一時金を支払う場合は注意が必要です。
償却前に退去する場合や、償却前に施設が倒産した場合の返金に関する取り決め内容は、重要事項説明書のなかでも最重要のチェックポイントと言えます。
下の画像は、短期退去した場合と倒産した場合の返金方法の記載です。
契約に必要な身元引受人・保証人
施設に入居する際に、施設側から「身元引受人」「保証人」を求められます。
「身元引受人」「保証人」がいない場合、施設への入居が難しくなります。
「身元引受人」「保証人」の役割
老人ホームなどの介護施設に入居するとき、身元引受人・保証人に明確な定義はありません。
支払いの連帯保証をすること、身柄や荷物の引き取りをすることを担う人を身元引受人・保証人としているケースが多いです。
また、身元引受人・保証人は入居者の判断力が低下し、病気の治療・介護方針の意思確認ができない場合には代理で対応する役割を担います。
- 本人に代わる意思決定
入居者の判断力の低下により意思決定ができない場合は、身元引受人が判断を担います。 - 緊急時の連絡先
入居者の怪我や事故、容態の急変で救急搬送されたときや急死したときは、緊急連絡が入ります。 - 各種手続きの代行
市区町村役所への行政手続きを代行します。必要な書類等の各種手続きを代行します。 - 入居者が亡くなった際の対応
入居者が亡くなったときは、入居費用の精算と身柄と荷物の引き取り・退去の手続きを担います。
- 金銭的な連帯保証
入居者が月額利用料金・公共料金などを滞納したときは「保証人」が債務の支払いをします。
また、退去や亡くなったとき、入居費用の精算をします。
運営する社会福祉法人や株式会社によっては、支払い債務を担う「保証人」と、意識決定・諸手続き・身柄と荷物の引き取りを担う「身元引受人」を兼任できないことがあります。
そのときは、近親者が2人必要となります。
入居契約書には、「身元引受人の権利義務」という項目があり、通常「連帯して債務を負う者」と規定され、その者は契約書に署名捺印することになります。
子供がいる場合は、子が担うのが一般的です。施設によっては2名必要になるところもあります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では保証人がいない場合、一般財団法人高齢者住宅財団の「家賃債務保証制度」を利用できます。
対象世帯 | 60歳以上の方、または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の方 |
保証対象 | (1)滞納家賃(共益費・管理費を含む) (2)原状回復費用(残置物の撤去を含む)および訴訟費用 |
保証料 | 2年間の保証の場合、月額家賃の35% |
家賃債務保証制度は、家賃債務を保証し連帯保証人の役割を担うことで、賃貸住宅への入居を支援する制度です。
その場合も身元引受人は必要です。
息子や娘が複数いる場合は全員で責任を持つ
子が複数いる場合は、誰が身元引受人になるのか相談して決めます。
入院時の保障と違って長期に渡る可能性があります。
署名捺印した者だけが責任を負うわけではなく、何かのときには一緒に考える姿勢が必要です。
親の判断力が低下した際には、誰が資産管理をするのかなども含めて、相談しておかないとトラブルの元です。
近年は高齢者の寿命が延びていて、親よりも子が先に亡くなる事態も想定されます。
親族間で、契約内容、施設の費用の件は風通し良くしておくのを強くお勧めします。
クーリングオフ制度の確認
全国の消費生活センターに寄せられる有料老人ホームに関する相談は年々増加傾向にあります。
なかでも、「契約・解約」に関するものが全体の約8割を占め、退去時や解約時の返金や精算に関する相談が後を絶ちません。
入居一時金の償却方法や、償却率などは契約時に確認しておくことはもちろんですが、クーリングオフについてもよく確認しておく必要があります。
- 入居一時金の返還に関して
- 原状回復費用の精算に関して
- 退去時における月額費用などの精算に関して
「気に入って入居したけど、実際暮らしてみると思っていたホームと違った」
「入居後すぐ体調を崩し、入院するに伴いホームを退居する事になった」
「入居後わずかな期間で亡くなった」など理由はさまざまです。
入居一時金のほぼ全額が返金
こういったトラブルを受け老人福祉法を改正し、2012年4月から有料老人ホームの退去に伴う入居一時金の返還にクーリングオフ制度が導入されました。
「90日ルール/クーリングオフ」と呼ばれ、入居後3カ月(90日)以内に退去や契約解除をする場合に適用されます。
3ヶ月以内の退去や死亡の場合、入居一時金から
- 居住していた期間の家賃分
- 居室の原状回復費用
を除いたほとんどの金額が戻ってくることになります。
契約の際に確認する箇所
契約する際には重要事項説明書の「短期解約特例制度」の条項をしっかり確認しましょう。
- いつから90日?
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基本的には契約日から90日以内ですが、施設によりいつから90日を起算するのかが異なる場合があります。
- 退居時の費用
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クーリングオフが適用されても、基本的には家賃や食費は戻ってきません。
その場合は、それらの費用を支払う必要があります。
食費などの他にクリーニング代など、どのような費用を支払う必要があるのかを確認しましょう。 - クーリングオフ適用の名目
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入居一時金だけでなく、入居申込金や前払い家賃など様々な名目があるため、何に対してクーリングオフが適用されるのかを契約時に確認しましょう。
- 返還方法や返還時期
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どのように返還されるのか、またその時期はどうなのかを確認しておきましょう。
- どのような場合に適用されるのか
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基本的に90日以内の解約であれば適用されますが、死亡の場合はきちんと解約と認識してくれるのかなどの確認をしておきましょう。
万が一、90日を過ぎてしまいクーリングオフが適用されない場合でも、償却されていない分の支払ったお金は戻ってきます。
ただし、90日前か後では戻ってくる金額の違いは大きいです。
親が入居後に施設に馴染めない様子だとか、サービスへの不満が大きい場合、「90日を期限」と考えて退去を検討しておくと良いでしょう。
ケガをした時の賠償責任を確認
高齢者施設施設では、転倒や誤嚥といった事故が起こることがあります。
事故の連絡を受けたらなかなか冷静でいるのは難しいものです。
介護施設ではどんな事故が起こりやすいのか、どのように対応したらいいのか、相談先はどこなのかをあらかじめ把握しておくようにしましょう。
施設には安全配慮の義務がある
施設での生活は、自宅での生活にくらべて安全だと考えられがちです。
実際には施設内で事故が起こることは珍しくありません。
以下の表は、ケガが発生した場所とどんなケガをしたかをまとめたものです。
安全だと思える居室での骨折事故が最も多いのが分かります。
事故は場合によって、利用者の通院や入院を余儀なくし、後に障害が残るなどの深刻な結果につながります。
最悪、死亡事故にもつながりかねないケースも考えられます。
その原因は人手不足や経験不足など、施設側の責任が問える場合と、そうではない場合があります。
施設と入居者は介護サービス契約を締結しており、その介護サービスに付随するものとして、施設は入居者の安全に配慮し、生命身体財産に損害を与えてはならないという義務が発生します。
これを安全配慮義務と言います。
具体的には、危険が発生することが予見可能であり、施設が何らかの措置をとれば損害結果を回避できる可能性があったにもかかわらず、十分な措置を取らなかったことから損害結果が発生した場合、施設に安全配慮義務違反が認められます。
事故によるケガへの対応は「重要事項説明書」で確認
事故が起きた際の対応については重要事項説明書に記載されています。
事前に読んで確認しておきましょう。
損害賠償責任への加入状況や、苦情や事故に対応する窓口についても併せて確認しておきましょう。
窓口の名称と、その窓口が施設内のどこに設置され、どのように相談を受け付けているかが記載されています。
相談窓口の電話番号や、受付時間も確認できます。
- 事故が起きた際の対応
- 損害賠償責任への加入の有無
- 苦情や事故に対応する窓口
- 相談窓口の電話番号や、受付時間
事故が起こってしまったら
事故が起こった場合、以下の点を参考にしてください。
施設において何らかの事故が発生した場合、介護保険法および厚生労働省令に基づき、
- 事故の発生状況や被害の程度
- 事故の原因分析
- 今後の予防対策
を市町村と入居者の家族に対して報告しなければなりません。
しかし、施設によっては事故対応に不慣れだったり、報告体制が整っていなかったりするために、家族への事故報告が行われない場合もあります。
また、時間の経過とともに、介護担当者の記憶もあいまいになるので、なるべく早い時期に報告を求めることが大切です。
報告は、できるだけ書面と面談の両方を求め、事故の原因や発生後の対応などについて疑問がある場合は質問をし、その際に答えられないことは、調査して回答することを求めましょう。
面談や電話でのやりとりは、メモを取るとともに録音しておきましょう。
施設の説明が不十分であったり、納得ができなかったりする場合は、次のような資料を収集します。
- 介護記録(介護日誌・業務日誌など)
- 介護保険認定調査票・個別援助計画書・ケアプラン
- 介護サービス契約書・重要事項説明書
- 市町村への事故報告書
- 救急活動記録票
- 病院のカルテ など
実際に事故が起きた場合には、当日の記録(介護内容を記した記録)を見せてもらい、事故が起きた経緯について説明を求めてください。
事故に対する賠償責任も大切ですが、同じような事故を繰り返さないための対策を聞くのも重要です。
納得できない場合は、同じく重要事項説明書に記載されている「苦情の窓口」に相談しましょう。
日頃から施設職員とコミュニケーションを確保できていると、こうしたトラブルが起きたときにざっくばらんな話ができる可能性があります。
- 重要事項説明書に記載されている施設内の相談窓口
- 区市町村の役所の介護保険担当窓口
- 国民健康保険団体連合会の担当窓口
- 社会福祉協議会の運営適正化委員会
各機関に相談すると本人の意向を確かめたうえで調査が行われます。
その後、解決に向けた助言、両者の話し合いの場が設けられます。
施設の倒産に備えた「一時金の保全措置」を確認
民間の会社には倒産リスクがあります。介護関連の事業も例外ではありません。
帝国データバンクの報告によると、2019年の老人福祉事業者の倒産は96件で過去最多を記録しました。
倒産が多い事業では、訪問介護サービス事業、通所介護(デイサービス)となっています。
倒産の原因は人材不足から
高齢化が進むなか、介護サービスの需要が増え続けている一方で「競争の激化」による「人材不足」、また管理者がなかなか育たない「後継者不足」で介護事業の倒産が増加している実態があります。
特に、介護に従事する人材の確保が進まず、介護職員の不足が介護業界全体で大きな問題となっています。
不足している人材を獲得するために、人件費や人材確保の支出が介護事業所の経営に影響し、倒産・廃業になっている介護事業所は多くあります。
また、有料老人ホームの倒産は2件にとどまっていますが、「競争激化が進むにつれ、資金調達、入居確保など事業計画が頓挫して軽悪化に陥る事業者が増加する可能性がある」と分析しています。
倒産しても入居者に500万円が保全される制度
近年増加している施設の倒産を受け、2006年4月以降に開設された有料老人ホームには、500万円を上限に入居一時金の一定額(まだ住んでいない分の家賃)が保全される「一時金の保全措置」が義務付けられています。
保全措置とは、老人ホームの倒産など万が一の事態に対して前払い金を保証する制度です。
入居者が前払いした入居一時金のうち未償却分が返還されないとき、最大500万円まで保全されます。
倒産した事業者に代わって銀行や損害保険会社、有料老人ホーム協会などが限度額(上限500万円)の範囲で未償却分を支払います。
入居一時金の保全措置があるかどうかを確認するには、下の画像の重要事項説明書の「保全措置」に記載されているので確認しましょう。
- 保全措置の有無
- 保全先
- 「その他留意事項」に記載されている内容
多くの施設には「入居一時金の保全措置」が定められていますが、中には悪質な施設もあるため、入居の際には「入居一時金の保全措置」がとられているか必ずチェックしましょう。
公益社団法人全国有料老人ホーム協会に加盟している有料老人ホームの場合は、「入居者生活保証制度」に加入しており、もし返却不能となっても協会から返金されます。
この制度を利用するには、入居者と事業者との間で「入居契約追加特約書」を締結します。
事業者より拠出金として、入居者一人あたり20万円(満80歳以上は13万円)を協会に支払います。
契約時に記入が必要な書類
- 入居契約書
- 有料老人ホーム入居契約追加特約書
- 重要事項説明書
- 特定施設人所者生活介護利用契約書
- 要介護認定等に伴う確認書
- 法定代理受領サービスに関する同意書
面談・契約時の注意点
契約書にサインをするというのは「納得し了解した」という証拠になります。
署名捺印を必要とする書類を一点ずつ慎重に確認しましょう。
入居者を見定めるための「面談」が行われる
納得ができる施設が見つかったら契約です。
その契約の前に、施設側からの「面談」があります。
入居する親が入院などの理由で施設に行けない場合は、通常、施設側が親に会いに来てくれます。
- 施設見学
入居者側が施設を見定める機会 - 面談
施設側が入居者を見定める機会
施設長やケアマネージャーが心身の状況などを確認し、入居しての生活が支障ないかを判断されます。
- 本人面談の目的や役割
-
本人面談を実施する目的は、入居者に合ったケアやサービスを提供することです。
日常生活動作や生活している環境、要望などは人によって異なるため、それぞれのニーズに合わせて考えなければなりません。
本人面談では、
- 入居者が現在どのような状態であるか
- 入居者が生活を送る中でどのような課題や問題を感じているかなど
入居者に関する情報の聞き取りを行います。
これらの聞き取りを行うことで、現在の状態やニーズを把握するだけでなく、医療や看護などの専門職とも連携が取りやすくなります。
- 本人面談で行うこと
-
本人面談では、老人ホーム側が入居希望者に対していくつかの質問をします。
本人面談で把握した情報から、老人ホームが入居条件と入居者の状態を判断するためです。
また反対に、入居者が本人面談の場で老人ホーム側に質問することも可能です。
場合によっては本人だけでなく家族や看護師、そしてケアマネージャーの同席が可能なこともあります。
面談には身元引受人も立ち合います。
施設側の面談とはいえ、せっかく顔を合わせる機会です。
安心して親を入居させられるか施設なのか、その場でしっかり見定めましょう。
入居が許可されると想定し、入居が可能となる日程の確認も行われます。
- 名前と生年月日、家族構成など利用者の基本的な情報
- 普段利用しているサービスや今後利用したいと思っているサービス
- 入居後にしたいことや趣味・好きなこと
- かかりつけの医院やいつも飲んでいる薬・持病やこれまでの病歴
- 入居者がどのような状態であるか確認
- トイレや紙おむつなど排泄に関する方法
- 移動するために使用している手段や夜にきちんと睡眠がとれているかどうか
- 普段の生活で困っていることや悩んでいることがあるかどうか
- 聞いておきたいことはあるかどうかなど
親の署名捺印を子が代理署名するケースも
面談の結果は数日内に電話や書面でお知らせされます。
入居の許可がおりたら入居日を決めます。
契約の際にはまず、重要事項説明書の説明を受けて、同意した後に署名捺印を行います。
通常、契約者は入居者本人ですが、本人の心身状態によっては署名捺印が困難なケースもあるでしょう。
その場合、成年後見人を立てているなら後見人が、後見人を立てていないなら家族が代行するのが一般的です。
施設への入居について親子で意思疎通ができていないまま、親の署名を代行することになった時、子にとって苦しい決断となります。
親が病気になった時の治療法の判断などにも通じることですが、親の判断力が衰えていないうちに、親子で介護の方法について話し合う機会を持っておきたいものです。
受け取った資料や書類は残しておく
介護保険や行政の高齢者サービスを使い始めると、いろいろな書類がたまってきます。
例えば、契約書、利用のしおり、各種の利用計画書、請求書、領収書・・。
毎月届けられるものもあり、見る見るうちに、山になります。
捨てて差し支えない書類も少なくありませんが、一方で、必ず保管しておかなければならない書類もあります。
介護保険をはじめとした民間事業者によるサービスを利用するとき、ほとんどの場合で、「契約書」「重要事項説明書」などという書類を渡され、署名捺印を求められます。
このときの書類は、絶対に捨ててはいけません。なぜなら、これらは利用者と事業者のお約束を文書化したものだからです。
- どんなサービスが受けられるのか
- だれがサービスを担当するのか
- キャンセル料はかかるのか
- 緊急の連絡はどこにするのか
- 事業所の営業時間は何時から何時までなのか
- 土日は対応してくれるのか
- 利用料はどのように支払うのか
- 個人情報はどのように守られるのか
- 利用を打ち切るにはどんな手続きが必要なのか
- 苦情は誰に言えばよいのか、などなど
契約によるサービスでは、利用者と事業者双方に、義務と権利が生じます。
違約すれば、民事訴訟の対象になることもありえます。
約束が守られないとき、契約書類があればそれを根拠に事業者に対応を求めることができるのです。
契約書とは異なりますが、行政サービスの申し込み時に渡される「利用のしおり」などにも、注意事項や連絡の方法など、大切なことが書かれています。
こちらも、きちんと保管しておきましょう。