夫婦共働きや、独身の子どもに介護されている認知症の親は、家族が仕事に行っている間は一人きりになってしまいます。
留守中に体調が急変したら、対応が遅れて最悪の事態を招くことがあります。
昔のように働き手と介護者が別という時代は過ぎ、これから「日中独居」の高齢者が増加する傾向にあります。
さらに追い打ちをかけるように、昨今は正社員での終身雇用という働き方にも陰りが見えています。
そのため、不安定な仕事で生活にギリギリの収入を得ながら、高齢の親をたった一人で介護しなければならない人が、さらに増えると予想されています。
介護や生活について相談できる包括支援センター。そういった窓口が朝9時から夕方5時まででは、相談したくてもできないというケースが非常に多いでしょう。
たとえ相談できたとしても、人手不足などで実際に支えてくれるシステムが十分に確立されていない地域もあるはずです。
サービスを受ける高齢者自身は、当然ながらヘルパーと顔を合わせるでしょう。
しかし、その家族は仕事に出ていて不在。
介護に関する不安は内にこもってどんどん膨らんでいき、いつか限界をむかえることが危惧されます。
介護サービスを利用するのは当然のこと
介護保険などのサービスを利用するのは当然のことで、家族だけで認知症の親を介護することはできません。
介護経験者が培ってきた知識や経験は、社会資源の一つです。
一人で抱え込まずに経験者に相談し、共感し合い、情報を交換することが大きな支えとなります。
介護サービスは「家族の息抜き」だけでなく、本人がプロの介護を受けたり社会に接したりする大事な機会です。
施設を検討する際、何を優先させるかしっかり考えるのが大切です。
例えば、散歩に行けることを最優先とするのであれば、近所にどういった施設があるか確認することから始めます。
選択肢となる施設
- 介護付き有料老人ホーム
- 介護型サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- ケアハウス(特定施設)
- 小規模多機能型居宅介護施設
介護型の施設では自由に外出できないところが多く、特に認知症があると一人での散歩は難しくなります。
しかし、施設の許可を取って子が近場を散歩に連れて行くことはできます。
大型の施設のほかにも、グループホームや小規模多機能型居宅介護施設があるか確認してみましょう。
施設長やケアマネージャーが、親の認知症が進行しないケアを一緒に考えてくれるような施設がベストです。
認知症の方が受けられる施設の支援サービスを利用する
介護保険による支援は、65歳以上で日常生活の介護や支援が必要になった方(または、認知症と診断された40~64歳未満の方)が受けられる介護保険サービスです。
地域包括支援センターや市区町村の窓口で申請した後、「要支援」「要介護」と認定されれば、サービスや給付金を受けることができます。
介護保険には様々なサービスがあるので、どのサービスを利用すればいいか迷われるかもしれません。
このような悩みは、「ケアプラン」を立てることで解決できるでしょう。
「要支援」の方であれば地域包括支援センターの担当者が、「要介護」の方であればケアマネージャーがプラン作成の支援をしてくれますので、まずは相談してみてください。
認定の区分によって利用できるものは異なりますが、下記のようなサービスを受けることができます。
自宅で受けられるサービス
- 訪問介護
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訪問介護員が自宅訪問をし、日常生活の支援をします。
- 訪問看護
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看護師が自宅訪問をし、健康状態の確認や維持・回復を支援します。
- 訪問リハビリテーション
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言語聴覚士、理学療法士、作業療法士などが自宅訪問をし、身体機能の維持・回復の支援をします。
- 訪問入浴
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自宅での入浴が難しい方の場合、介護員が簡易浴槽を積んだ車で自宅訪問をし、入浴支援をします。
通所サービス
- デイサービス(通所介護)
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食事や入浴の支援、健康状態の確認、レクリエーションなどを通じて生活を支援します。
- デイケア(通所リハビリ)
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身体機能の維持・回復の支援をします。
認知症対応の施設で暮らす
- ショートステイ
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短期間、施設で生活・宿泊をして、食事や入浴などの日常生活の支援を受けられます。
- 介護老人保健施設
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自宅での生活を目指す方のために、日常生活を医療的に支援する施設です。
- 特別養護老人ホーム
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自宅での生活が難しい方のために、暮らしの場として生活を支援する施設です。
- グループホーム
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認知症の方が少人数で共同生活を送り、スタッフの支援を受けながら暮らす施設です。
福祉用具のレンタル・購入補助
必要な福祉用具をレンタルするときや購入するときに介護保険から費用補助を受けられます。
購入の際は、特定福祉用具販売・特定介護予防福祉用具販売の指定を取得している事業所から
購入して下さい。
平成18年4月1日から介護保険法が変更され、特定福祉用具・特定介護予防福祉用具購入は、指定を受けた事業所から購入した物に限り介護保険が適用されるようになりました。
福祉用具購入費の助成金の支給限度基準額は、1年間(各年4月1日から3月31日間)で、10万円迄です。
助成金は、実際の特定福祉用具・特定介護予防福祉用具の購入額の9割なので、最大9万円(支給限度基準額10万円の9割)を上限として支給されます。
医療費負担への支援
ひと月当たりの医療費や介護サービスの自己負担額が上限額を超えた際は「高額療養費制度」「高額介護サービス費制度」が適用され、超過金額の支給を受けることができます。
その他、市区町村の福祉課や保健所での申請が必要になりますが、精神科通院が継続的に必要な方の場合は「自立支援医療制度」を利用することで自己負担を1割に減らすこともできます。
資産管理の支援
認知症によって判断力が十分でなくなった方が不利益を被らないよう、財産や生活を守るためのサポート制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度とは、認知症や知的障がいによって判断能力が不十分な人が、生活をする上で不利益を被らないよう、「成年後見人」が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。
- 支援をしてもらう人:被後見人
- 支援をする人:成年後見人
任意後見制度
現在判断能力がある方が将来に備え、信頼できる支援者を自分の意思で「後見人予定者」として決めておく制度です。
本人の判断力が低下した際は「後見人予定者」が代理で財産管理等の支援を行います。
法定後見制度
法定後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度で、本人の判断能力の程度に応じて、補助、保佐、後見の3類型があります。
- 補助人
-
財産の管理・処分で援助が必要な際に支援する人
- 保佐人
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財産の管理・処分で援助が常に必要な際に支援する人
- 後見人
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財産の管理・処分ができない人の代理として支援する人
日常生活自立支援事業
一人暮らしの親が認知症や知的障害など判断能力が不十分になっても「住み慣れた町や地域で自立して暮らしたい」と思う方に適したサービスです。
日常生活自立支援事業では、買い物や光熱費、ガス代などの公共料金の支払いといった日常的なお金の管理や通帳やハンコ、介護サービスの申し込みといった重要書類の管理や契約の代行を支援してくれるサービスです。
さらに、「元気に暮らしているか?」「困ったことはないか?」といった見守りや何か大きな買い物をしたいときに相談、バリアフリー住宅へのリフォームが必要になれば手配もしてもらえます。
日常生活自立支援事業を利用することで、次のような3つメリットがあります。
1.お金や重要品の管理
- 悪質な訪問販売や振り込め詐欺の被害に遭うリスクが減る
- 通帳やハンコや財布を管理してくれ、認知症の物忘れで無くなる心配がなくなる
- 生活用品購入の代金支払い
2.福祉介護サービスや日常生活に必要な契約手続きの援助
- デイサービスやホームヘルパーといった福祉介護サービスの契約手続き援助
- 税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の 公共料金の支払いの手続き援助
- 住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等
3.見守り支援
- 定期的な訪問による生活変化の察知や孤独死の回避
日常生活自立支援事業の利用方法としては、全国すべてに設置されている社会福祉協議会と契約を結び、生活支援員に頼む流れになっています。
単身者だけでなく、夫婦世帯でも支援を受けることができます。
- 判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)
- 本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方
契約条件としては、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで判断能力が不十分な方が対象になります。
なお、療育 手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていたり、認知症の診断を受けている方に限られるものではありません。
1人暮らしの認知症の親と同居することが出来ず、お金の管理や福祉サービスの契約などに困っている方は、日常生活自立支援事業の利用をお勧めします。
- 認知症の人が介護施設へ入居する場合であれば、本人の状態が悪化する前から早めに対応し、新たな環境に慣れておく方が入居後の生活の質を高めることが出来ます。
- 在宅で介護サービスを利用している場合は、ショートステイなどの宿泊を含めた介護サービスを利用してみるのがお勧めです。
認知症によって判断力が十分でなくなった場合、地域包括支援センターか社会福祉協議会で申請をすることで、「日常生活自立支援事業」による下記のようなサポートを受けられます。
- 福祉サービス、医療サービスの情報提供や利用にあたっての相談
- 日常生活の中での金銭管理に関する支援(公共料金の支払い手続きなど)
- 事務手続きに関する支援(公的書類の届け出など)
- 通帳などの保管の支援
日常生活自立支援事業を利用する際は、実施主体である都道府県や指定都市の社会福祉協議会が定める利用料を利用者が負担します。
例えば、訪問1回あたり利用料は平均1,200円程度になっています。
ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については無料となっています。
日常生活自立支援事業の利用方法
日常生活自立支援事業を利用するためには、まず、市町村または特別区の社会福祉協議会に連絡します。
市町村または特別区の社会福祉協議会の連絡先は、各社会福祉協議会のウェブサイト等に掲載されています。
連絡後の流れは、以下のようになります
日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い
- 日常生活自立支援事業
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福祉サービスの利用援助や日常的な金銭等の管理に限定している
- 成年後見制度
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日常的な金銭に留まらないすべての財産管理や福祉施設の入退所など、生活全般の支援(身上監護)に関する契約等の法律行為を援助
精神障害者保健福祉手帳
認知症などで長期にわたり生活に支障が出ている方であれば、市区町村の精神保健福祉に関する窓口や保健所での申請で「精神障害者保健福祉手帳」を手に入れることで、以下のサービスを受けられます。
年齢の上限は規定されていません。 認知症と診断されれば、その年齢に関わらず申請が可能。
- 所得税や住民税、相続税の控除
- 生活福祉資金の貸付
- NHK受信料の減免
- 自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級) など
地域によっては、公営住宅の優先入居や交通機関利用料の助成などのサービスを提供している場合もあります。
地域の社会資源やサポートを活用する
地域包括支援センターに足を運んでみてください。地域包括支援センターは、介護に関する相談を受けてくれます。
例えば、金銭管理に問題があれば成年後見制度を利用します。成年後見制度は、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談しましょう。
薬を管理できないなどの場合はかかりつけ医に相談したり、訪問看護を利用してみましょう。 その他、訪問介護や通所施設の利用も方法の一つです。
介護保険利用になると、ケアマネージャーが相談に乗ってくれます。あらゆる社会資源を活用して、家族の負担を最小限にしましょう。
サービスや支援の活用
訪問介護・訪問看護などの在宅介護サービス、デイサービス・ショートステイなどの通所介護サービスまでさまざまな種類があるので、症状や要介護度に応じて利用するサービスを選択しましょう。
介護認定を受けることで介護保険制度を利用できるようになり、自己負担額を軽減できます。
また、最近では認知症対応可能な民間の介護施設の中でも、費用負担を比較的抑えられるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)が増えてきているので、ぜひチェックしてみてください。
- 各種見守りサービス
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安心して生活できるようにサポートするツールとして、公的機関の提供する介護サービスや民間企業や自治体が提供する見守りサービスがあります。
また、安否確認サービスなども選択肢として考えておくと良いでしょう。
これらを有効活用することで、家族が精神的な安心を得られるメリットがあるので、不安がある場合は利用を検討してみてください。
- 食事配達のサービス
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食生活の乱れると、栄養が偏ってしまったり低栄養状態を起こしてしまうリスクが高まるので、 そこでおすすめなのが、高齢者向けの食べやすく栄養バランスの整った弁当を配達してくれる食事提供サービスです。
高齢者自身、栄養のある食事をとれる他、閉じこもりがちな高齢者にとって会話出来るなじみの存在ができたり、安全確認もできる優れたサービスなので、有効活用しましょう。
地域の社会資源やサポートを活用する
地域包括支援センターに足を運んでみてください。地域包括支援センターは、介護に関する相談を受けてくれます。
例えば、金銭管理に問題があれば成年後見制度を利用します。成年後見制度は、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談しましょう。
薬を管理できないなどの場合はかかりつけ医に相談したり、訪問看護を利用してみましょう。 その他、訪問介護や通所施設の利用も方法の一つです。
介護保険利用になると、ケアマネージャーが相談に乗ってくれます。あらゆる社会資源を活用して、家族の負担を最小限にしましょう。
親も大切ですが自分も大切に、介護以外の時間を持つ
認知症の実態をオープンにすると、どこかで理解者、協力者が手をあげてくれるはず。
公的な相談機関や私的なつながり、地域社会、インターネットなどのさまざまな情報を上手に使い、介護家族の思いを訴えていきましょう。
介護者にも自分の生活や生甲斐があるはず、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思わないように自分自身の時間を大切にしてください。
介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。