2021年4月に介護報酬改定によって、介護サービスの利用料が全体的に増加しました。厚生労働省は介護サービスの利用料の引き上げを発表しており、これに合わせる形で、自治体も65歳以上の介護保険料を値上げ。
介護サービスを利用する際は、こうした料金負担の増加を踏まえて計画を立てる必要性が強くなってきました。
2021年4月から値上げした介護サービスの利用料
介護保険サービスの利用料の基礎となる介護報酬は、3年に1度見直されます。2021年度の改定内容が2021年1月に厚生労働省より発表され、4月以降は介護サービスの利用料が値上げされました。
なぜ利用料は値上げされたのか
今回の値上げの背景には、介護事業者の経営を安定させるという狙いがあります。
厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定に向けた各種調査の公表について」によると、新型コロナウイルスの流行前と比較して収支状況が「悪くなった」と回答した事業所の割合は2020年5月時点で47.5%、10月時点で32.7%でした。
サービス別にみると、5月に「悪くなった」と答えた事業所は、通所系サービスで高い傾向にあります。
介護事業者は、利用者に介護サービスを提供し、利用者から介護報酬の1~2割を受け取り、残る8~9割を国や市町村などの保険者より受け取っています。介護事業者を救済するには、介護報酬そのものを上げるしかありません。
介護報酬が上がるということは、それに伴い利用者の負担も増加するということになります。
介護サービスの利用料の変更点
今回の改正は、全体でいうと0.7%の引き上げとなりました。また、2021年4月から9月までの6ヶ月間は、新型コロナウイルス感染症への対策として、基本料はさらに0.1%上乗せされています。
訪問介護や通所介護 (デイサービス) 、特別養護老人ホーム (特養) の利用にあたっては今後、利用料が上がる可能性が高いでしょう。どのくらいの負担が増加するかは、介護サービスを利用する回数によっても異なります。
仮に1回あたりの利用料の増加が数十円から数百円だとしても、「塵も積もれば山となる」です。月額、年額に置き換えてどのくらいの利用料の負担が増加するのか、家計への影響を把握しておきたいところです。
また、特別養護老人ホーム (特養) などの住居費や食費は、原則は自己負担ですが、これまで住民税非課税世帯に対しては手厚い補足給付がありました。
しかし、新しい区分が増設され、非課税世帯であっても年金収入等が120万円超であれば、負担が増加する可能性が高いでしょう。補足給付を受ける条件として、預貯金などの金融資産が1,000万円以下であることが要件でした。
しかし、2021年8月からは資産要件が段階に応じて650万円以下・550万円以下・500万円以下に変更されました。
また、介護保険施設入所者・ショートステイ利用者の食費(日額)の負担限度額が以下のように変わります。
居住費の負担限度額は変更ありません。
第28回社会保障審議会 (2019年) の「今後の社会保障改革について」によると、介護保険の第1号保険料は
- 2025年度には約7,200円
- 2040年度には約9,200円
に値上がりすると予想されています。
次の要件をすべて満たす方
- 市民税課税者がいる高齢者夫婦世帯・高齢者による親子世帯
- 世帯員が、介護保険施設に入所し、利用者負担第4段階の食費・居住費を負担していること
- 世帯の年間収入から、施設の利用者負担(1割負担・食費・居住費の年額)を除いた額が80万円以下となること
- 世帯の預貯金等の額が450万円以下であること
- 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと
- 介護保険料を滞納していないこと
預金額次第で受けられるサービスや補足給付が制限される場合も
預金額によっては、受けられる介護サービスや補足給付に制限が生まれる可能性もあります。かといって老後への備えを怠るというのは賢い選択ではありません。
老後への備えをしつつ、政府の動向についても情報収集をし、どんなサービスが利用できるのか、改定によって利用料がどう変わったのかをきちんと把握しておくようにしましょう。
変更後の利用料を正確に把握し、介護サービスの利用計画を立てる
ひと昔前までは、「真面目に勤め上げて退職すれば、退職金と年金で生活できる」という考え方が主流でした。
しかし退職金も年金も年々減少傾向にあり、介護保険制度も毎年のように膨れ上がる介護費用に対応しきれていません。
これからの時代は計画的に資産形成をし、利用できる制度については自分で調べ、老後の計画を立てることが重要です。
今後も介護報酬改定の動向もしっかりチェックし、改定内容も踏まえた介護サービスの利用計画を立てる必要があります。