地震や台風といった自然災害の多い日本国内では、自治体や家庭ごとに様々な防災対策が行われています。
近年、特に多発しているのが水害です。
水害には「津波」、「土砂災害」、「洪水」などがあり、どの災害リスクが高いかは居住地によって異なるので、確認した上での適切な対策が必要です。
状況によっては、安全な場所への避難が必要になることも考えられます。
そのため、いつどこで発生するか分からない自然災害に備える事は、災害が起こった時に、最短で最善の行動をとるために重要であり、命を救う事にもつながります。
在宅介護を受けている高齢者がいる家庭では、こうした災害時でも正しいケアができるように、相応の防災対策が必要です。
今回は、在宅介護における防災対策や必要な道具について詳しく紹介します。
高齢者が備えておきたい「準備品」
基本的には、高齢者が家族と同居している場合も、1人暮らしや高齢夫婦のみの場合でも、自然災害に備える備蓄品には大きな違いはありません。
電気やガス、水道が止まった時の事を考えて、最低でも3日~1週間程度の最低限の生活ができるためのアイテムを準備しましょう。
生活維持に必要な最低限のアイテムをリストアップ
リストアップする際には、大きく下記の2つに分類すると良いでしょう。
- 持っていないと生活できないもの
- 持っていると便利なもの
備蓄品として確保したものは、バックパックに入れて自力で避難所まで運ぶ必要があるため、重すぎると持っていけなくなってしまいます。
優先順位をはっきりさせる事が重要なポイントとなります。
持っていないと生活できないものを準備
- 飲料水
- 1週間分程度の保存食
- 常備薬(持病のある方は必須)
- 排泄に関わるもの(トイレットペーパー、簡易トイレ等)
- 万が一怪我をした時の応急処置ができる医療品
- 下着や着替え
- 災害や避難状況を確認できるもの(携帯用ラジオ、バッテリー等)
高齢者ならではの必要不可欠なアイテムを準備
介護用品においては身体状況によって個人差があるため、必要なものを十分な量だけ備蓄しておく事が、万が一の際には安心につながります。
- 排泄トラブルのある方:おむつやリハビリパンツ
- 飲み込みや歯に問題のある方:介護食や高カロリーゼリー等
高齢者の場合には、常用している薬の確保が重要になります。
なくなると困る薬の場合には、備蓄用を含めて少し多めに出してもらえないか医師に相談してみましょう。
避難所からも薬を出してもらう事も可能ですが、その場合には、お薬手帳があるとスムーズに手続きできます。
そのため、お薬手帳を忘れないように、普段から管理しておきましょう。
あると便利なアイテムも余裕があれば準備
- 大きめの段ボール箱
簡易的なトイレ間仕切りとして活用できる他、汚れている場所に座ったり横になる際には下に敷いて使え、とても便利です。 - 長めのヒモ
衣類などを洗濯したり、汚したものを洗った時に物干し替わりになります。
こうした備蓄品は、万が一の時にはサッと持ち出せるようにまとめておくと良いでしょう。
段ボールの中や、部屋の押しし入れの中など、いざという時にすぐに持ち出せない場所に置くのは極力避けるのがベターです。
数秒から数分という時間内に、パニックになっている中でやるべきことをすぐに行動に移せることが、命を守るための最大の備えとなります。
要介護者が特に用意しておきたいもの
高齢者の中でも特に要介護者や認知症の人は、災害が起きたときに何らかの支援が必要です。
事前の準備では、一般の方が必要とする基本的なアイテムに加えて用意しておきたいものや、配慮しておくべきことがあります。
いざという時に困らないように、日頃から確認しておくことが大切です。
非常用介護食、とろみ剤
災害時に支給されるおにぎりやパンは、嚥下(えんげ)機能が衰えている人は食べにくく、誤嚥(ごえん)の危険性があります。
食べやすい非常用介護食を備えておきましょう。
要介護者は日頃食べ慣れているものを食べたがる傾向があるので、普段から時々、非常用介護食を食べてもらう習慣をつけ、多めに用意しておくと良いかもしれません。
そのほか、お水やお茶にとろみをつけられる「とろみ剤」を準備しておきましょう。
喉に流れ込むスピードが緩やかになり、誤嚥を予防します。
常備薬、お薬手帳
要介護者は複数の薬を飲んでいることも多く、その中には飲み続けなくてはいけない薬もあります。
災害時は薬がすぐに手に入りにくい状況になる可能性もあるので、いざという時のために準備しておくことが大切です。
まずはご家族が服用している薬の種類と量を把握し、かかりつけ医や薬剤師などと相談の上、災害に備えた量を確保・管理しておくと良いでしょう。
おむつを多めに
災害時は水が使えなかったり、避難所でトイレが使いにくいこともあります。
おむつは要介護者はもちろん、健常者でも使用することがあるので、多めに準備しておくと便利です。
段ボール箱の中にビニール袋を入れて、おむつを敷くと、簡易トイレとしても使えて後始末も簡単です。
「備え」は食材や日用品の備蓄だけではない
自然災害に対する備えの第一歩は、日用品や食料、介護に必要なアイテムを備蓄する事です。
しかし、それだけが備えではありません。万が一の事態が起こると誰でもパニックを起こし、冷静に行動できない事が多いものです。
特に、高齢者の場合には少しでも迅速に避難所までたどりつけるよう、普段から心の備えもしておく必要があります。
避難場所と避難経路の確認
全国の各市町村では、それぞれの家庭の位置によって、避難所が指定されています。
自宅から避難所までの地図をプリントアウトし、避難経路を明記するとともに、危険が予測される場所もチェックしておきましょう。
体力的に可能なら、実際に避難場所まで定期的に足を運び、慣れておくのもおすすめです。
緊急連絡カードを作成する
また、災害時の緊急連絡カードを作り、普段から携帯する習慣をつける事も重要です。
災害時においては、家族と離れ離れになってしまうリスクがあります。
認知症を患っている方は特に、緊急カードがなければ家族と再会できない可能性があります。
また、極度の緊張やストレスから、災害をきっかけに認知症を発症したり、症状が進行してしまう事もあります。
そのため、万が一に備えて緊急連絡カードを作り、普段から身につけておくのが安心です。
地域の人とつながりを持つ
高齢者にとっては、普段から地域とのつながりを持つ事もまた、自然災害に備えるという点ではとても重要です。
特に、「独居の人」や「高齢の夫婦」で生活している場合には、地域とのつながりを持つ事によって、万が一の時には助け合う事ができます。
自治体によっては、定期的に防災訓練が開催されているので、積極的に参加する事もまた、心の備えという点ではおすすめです。
避難情報について理解しておく
避難のタイミングについて理解しておく事も、高齢者にとっては大切な備えとなります。
各市町村では、避難が必要になると避難情報が発令されます。
テレビやラジオ、防災スピーカーやスマホなど、いろいろな方法で発令するため、確実に確認できる方法を確保しておきましょう。
また、「準備や移動に時間がかかる方」については、早い段階での避難を進めたり、協力を得られそうな人に連絡をとっておくと良いでしょう。
感染対策も必要とされる避難生活
多くの人が避難する避難所では、とかく衛生状態が悪くなりやすいものです。
免疫機能が若い人と比べて低下していることが多い高齢者の場合には、ウイルスや細菌による感染症は特に心配な要素ではないでしょうか。
避難所では、できる限りの感染対策を行うでしょうが、物品や人手に限りがある状況では十分に対応できない場合もあるでしょう。
そのため、避難をしたら、高齢者も若い人も、自分自身で感染症対策をする事が必要不可欠です。
感染対策グッズ① マスクの着用
例えば、空気感染や飛沫感染を防ぐ対策としては、マスクの着用が挙げられます。
衛生面の事を考え、マスクは複数枚を準備しておくのが安心です。
また、避難所で洗濯ができない状況を想定して、除菌スプレーもマスクと一緒に保管しておくと良いでしょう。
感染対策グッズ② 消毒液やハンドソープ
アルコール消毒液やハンドソープなども、あると便利なアイテムです。
避難所に設置されている可能性は高いですが、無くなる可能性や多くの人と共有することが想定されます。
そのため、基本的には自分が使う分は自分で確保しておくのが安心です。
感染対策グッズ③ 余裕があれば準備したいもの
- スリッパ
- 体温計
- 使用済み汚物などを処理するためのゴミ袋
これらも合わせて確保しておくと安心です。
避難所では、基本的に最低限の物資しか配備されませんので、自分にとって必要なものはできるだけ自身で準備する事が必要です。
まとめ
自然災害に対する備えは、日本全国どこに住んでいても必要です。
特に、在宅介護を受けている高齢者は日用品や食料だけではなく、介護に必要なアイテムや薬についても確保しなければいけません。
また、モノの備えだけでなく、心の備えも万が一の際にはパニックにならない重要なポイントとなります。
普段から避難所へ足を運んでルートを確認したり、避難生活を想定して、必要なアイテムは事前に準備しておきたいものです。
避難所でも最低限の設備や物資はありますが、不足する事態が考えられます。そのため、自分のものは自分で準備しておくのがおすすめです。