介護タクシーで介護保険を使う方法
介護タクシーは、高齢者や障害を持つ方など、通常の公共交通機関を使うことが難しい人のための、特別なタクシーサービスです。車で送迎するだけでなく、乗車・降車の介助や、必要に応じて室内からの移動支援、通院先でのサポートなどを行うことが特徴です。
介護タクシーを利用できる人
基本的には 「一人で公共交通機関(電車・バスなど)を利用することが難しい人」 が対象です。具体的には、以下のような状況にある人です。
- 要介護1~5の認定を受けている方
- 自宅や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などで生活しており、一人で公共交通機関を利用できない方
要支援1・2の方は、たとえ公共交通機関が利用できない場合でも、介護保険を使った介護タクシー(通院等乗降介助)は利用できません。
要支援1・2の方が利用できるタクシー
介護保険が適用されない「福祉タクシー」や「民間の介護タクシー」であれば、利用は可能です。ただし、全額自己負担となります。
区分 | 介護保険タクシー(通院等乗降介助) | 福祉タクシー・民間介護タクシー |
---|---|---|
要介護1~5 | 利用可(保険適用) | 利用可(自己負担) |
要支援1・2 | 利用不可(保険適用外) | 利用可(自己負担) |
以下のツールもぜひご利用ください。介護タクシーが利用できない場合は代替案も提供します。
利用目的
介護保険が適用されるのは、日常生活上または社会生活上必要な行為に伴う外出に限られます。具体例は以下の通りです。
- 医療機関への通院(受診、リハビリ等)
- 本人が行く必要のある補装具・補聴器・メガネの調整や買い物
- 銀行での預金の引き下ろし
- 役所での手続きや選挙投票
趣味や旅行、通常の買い物などは介護保険の対象外です。
利用の流れ
介護タクシーは「移動手段」だけでなく、乗降や移動の介助が一体となったサービスです。利用の前に、ケアマネジャーと相談することが第一歩になります。
担当のケアマネジャーに介護タクシー利用の希望を伝えます。
介護保険を使う「通院等乗降介助」の場合は、ケアマネジャーがケアプランに組み込む必要があります。
自費利用ならケアプランは不要です。
利用日時、目的地、出発地点など詳細を伝えて予約します。多くの場合、前日〜数日前までの予約が必要です。
- 体調チェック
- 必要な荷物(診察券、保険証など)の用意
- 車椅子や必要な福祉用具があれば準備
介護タクシーの運転手が自宅などから目的地まで送迎し、乗降時の介助も行います
介護保険利用の場合は、介助部分のみ自己負担(1〜3割)
費用について
介護タクシーの利用料は一般タクシーのように運賃のほかに、以下のような複数の項目が別々に加算されるため、最終的な総額がわかりにくくなります。
費用の基本構成
介護タクシーの費用は主に3つの要素で構成されます。
- タクシー運賃
- 走行距離や時間に応じた標準的な料金。
- 介助料
- 乗降や移乗のための介護サービス。
- 介護保険適用時は1〜3割負担、それ以外は全額自己負担。
- 機器レンタル料
- 車椅子やストレッチャーなどの使用料。
介護保険適用時の相場(要介護1〜5)
- 乗降介助(通院等乗降介助)
- 1回100〜300円程度(介助内容によって変動)
- 運賃
- 介護保険適用であっても基本的に自己負担(距離・時間に応じた料金)
- 介護器具レンタル
- 車椅子:500〜1,400円
- ストレッチャー:1,000〜6,000円程度
項目 | 保険適用(自己負担1〜3割) | 自費利用(全額) |
---|---|---|
運賃 | 自己負担/介護保険無し | 全額自己負担(800円〜/距離・時間制) |
介助料 | 100〜300円/回 | 500〜1,500円/回 |
院内付き添い | 保険未適用(全額自己負担) | 900〜2,000円/30分 |
車椅子レンタル | 500〜1,400円/回 | 同様(自己負担) |
ストレッチャーレンタル | 1,000〜6,000円/回 | 同様(自己負担) |
介護タクシーと福祉タクシーの違い
両者の違いは介護保険が適用されるかどうかではなく、「運転手が介助を行うかどうか」という点が根本的な違いであり、その結果として介護保険の適用可否が分かれます。
項目 | 介護タクシー | 福祉タクシー |
---|---|---|
保険適用 | あり(介助部分のみ) | なし(全額自己負担) |
対象者 | 要介護1~5の認定者 | 障がい者、要支援者、要介護者、その他移動困難な方 |
利用目的 | 通院など日常生活に必要な外出のみ | 制限なし(レジャー・旅行・買い物等も可) |
ケアプラン作成 | 必要 | 不要 |
家族の同乗 | 原則不可 | 可能 |
運転手の介護資格 | 介護職員初任者研修等が必要 | 義務付けなし(事業者による) |
サービス内容 | 乗降介助や必要な介助 | 事業者によって異なる(介助なしの場合も) |
福祉タクシーは、障がい者や要支援者、要介護者など幅広い人が利用でき、目的も自由です。全額自己負担ですが、家族の同乗やレジャー利用も可能です。
介護タクシーは「介助付きの移動サービス」、福祉タクシーは「設備付きの移動手段」と捉えるとわかりやすいです。
介護タクシーで家族が同乗できる条件
介護タクシーは、ほとんどのケースで家族同乗は認められませんが、例外とした以下の場合同乗可能です。
- 認知症や精神疾患があり、家族がいないと精神的に不安定になり、安全な移送が難しい場合
- 痰の吸引や携帯酸素など、移動中に特別な医療的ケアが必要な場合
- 失語症や重度の認知症などで、本人だけでは医師に病状を伝えられず、通院目的が果たせない場合
これらは自治体や事業者の判断で例外的に家族同乗が認められる代表的なケースです。原則は家族同乗不可ですが、こうした事情がある場合は事前にケアマネジャーや事業者へ相談し、許可を得る必要があります。
長距離移動や旅行については、介護保険適用の介護タクシーは「日常生活上または社会生活上必要な外出」に限定されるため、旅行や観光、私的な長距離移動は保険適用外です。
利用前に知っておきたい注意点
- キャンセル料や予約の変更
- 事前に確認すべき設備や対応範囲
- 介護タクシー事業者選びのポイント
キャンセル料や予約の変更
介護タクシーは事前予約制です。直前のキャンセルや当日の変更には、キャンセル料が発生することがあります。キャンセル料の金額や発生タイミングは事業者ごとに異なり、たとえば「車両が営業所を出発した後のキャンセルは2,000円~3,000円」など具体的な設定がある場合もあります。
病院の予約が変わる可能性がある場合は、事前にキャンセルポリシーを確認し、変更可能な時間帯や費用を把握しておくことが大切です。
事前に確認すべき設備や対応範囲
介護タクシーには、車椅子固定装置、リフト、ストレッチャー対応などさまざまな設備がありますが、すべての車両に同じ設備が備わっているわけではありません。利用者の身体状況や移動時の安全性に応じて、必要な設備が備わっているかどうかを事前に確認しないと、当日に「乗れない」「安全に移動できない」といったトラブルにつながる可能性があります
利用者の状態や必要な支援内容に応じて、適切な設備と対応があるかを必ず事前に問い合わせましょう。
介護タクシー事業者選びのポイント
事業者によってサービスの質や対応が大きく異なります。信頼できる事業者を選ぶためには、過去の利用者の口コミ、ケアマネジャーの推薦、事業所の資格(訪問介護事業所の指定など)を参考にすると良いでしょう。見積もりやサービス内容を比較し、納得した上で契約することが大切です。
- 実績や過去の利用者の口コミを確認する
- サービス内容や対応範囲の明確さ
- ケアマネジャーや専門家の推薦
- 見積もりや契約条件の透明性
- コミュニケーションのしやすさ・対応の迅速さ